山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

二十歳の男

去年の暮れから、二十歳の男と同居している。一年前くらいから知り合いだったが、本格的につきあいだしたのは、去年の暮れ、クリスマス直前であった。こいつは高校卒業後、大学受験に失敗し、受験生でもありつつ、バンド活動を続け、一時はメジャーデビューも決まったのだが、仲間とのいざこざで暗唱に乗り上げ、結局、ニートとかフリーターとかと呼ばれるものに属しながら、この世を憂いたり、バカにして遊びほうけたりしているわけである。

おまけに年明けから大病をわずらって、ひくにひけない状態になり、それでも若さと野性があいまって、家を飛び出し、長旅に出ている。こんな向こう見ずな二十歳の男の気持ちなど、心底わかるはずもなく、しかし、私が大切にし、もっとも愛してやらない限り、彼は生き抜くことができないのである。骨が折れる。

しかし、こいつもだんだん慣れてきてようやく、旅の最終目的地につき、なんとか、腰を落ち着けそうである。あー長かった。もちろん、最後にもうひと波乱あるし、なんといっても、ギリギリのところで、こいつが何を考え、何を求めているのかがわからないので、最後までどうなるのかがわからないのである。けれども、目下、こいつこそが自分にとって、もっとも身近でもっとも大切で、もっとも心血を注いでいる相手なのである。

私自身、浮気とまではいわないまでも、時効直前の殺人犯と懇ろになったり、若い女性の結婚話にひたったり、家事や美術などにも片足をつっこんだりしているのだが、やはり、こいつのところにがっつりもどってやらないといけない。案外、「まだかよ!」と待っていてくれるのだな。

そんなわけで、二十歳の男は、自分の小説の主人公であった。こういうもん書いてると、そいつとだらだらつきあっているような錯覚、もしくは、自分が二十歳の男になってしまうのね。はぁーつ。そんなわけで、雨の日も日曜日も、そいつのところへ戻っていくのであった。