山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「ガリバー旅行記」

そんなわけで、飛行機のなかで見た映画の感想3本目。

映画「ガリバー旅行記」は、アイルランド生まれの作家・ジョナサン・スイフトの作品を原作とする。

この原作は、こびとの国(リリパットアーミー)や巨人の国が出てきたりと、型破りで楽しいおとぎ話として知られていると思う。

けど、自分のスイフトに対する興味はちょっと偏っている。

尊敬する作家・富岡多惠子さんの小説に「ひるべにあ島紀行」(講談社)というのがあって、これに作家スイフトに関する記述がたくさん出てくるのだ。

それによれば、スイフトはとある貴族の男とその家政婦の間にできた不義の子らしい。あるいは、彼が生まれる前に父親が亡くなっていた…という説もあり、とにかく、スイフトはシングルマザーに育てられた、かなり貧しい出身である。

貧しく苦労して育った作家なんてそんなにめずらしいものではないけど、彼の人生を知ると、なんで荒唐無稽な物語ができたか…が少し想像できる。

「ガリバー旅行記」といえば、子供向きのお話のように思えるけど、実際はこの作家、かなり辛らつで、けっこう、ねじ曲がったひとだったらしい。

職業は牧師だったようだけど、当時のアイルランドはとても貧しかったから、「乳児を太らせて、食用にイングランドに輸出してはどうか」なんて、冗談としてきつすぎる提案をしたりしている。

その他にもへんてこな言動をする人だったらしく、興味を持っていた。なので、「ガリバー旅行記」に対してもストレートに面白がる…というより、作家の奇妙な痕跡を探してしまうところがあった。

なので、普段はあまり、こういうにぎやかコメディは見ないんですが、映画も見ました。

それに、主演はジャック・ブラックだから、楽しめるよね…と思って。

そういう意味で爽快な作品だった。わりとストレートな。

ジャック演じる主人公は、出版社のさえないメール係、片思いの編集者はいるけど、告白すらできずにいる。

お決まりの、「あまり人生うまくいってない主人公」を描くところから始まる。映画の定石。

(「ジュリエットからの手紙」も「抱きたいカンケイ」もスタートラインでは、主人公は、悩みを抱えているのだ。悩みはそれぞれだけど、映画はそれを2時間で解決して見せるもの…というのが脚本の基本となっています)。

そんな彼にチャンスが訪れる。「謎のバミューダ三角地帯」を取材することになる。

実際は海での取材などしたことがないのに、片思いの編集者に受けたい一心で引き受ける。

そして、彼のボートは海に起こる竜巻みたいなものに飲まれて、異次元の世界へ。

目が覚めると、彼は全身を縛られて横たわっている。まわりには、小さなサイズの人間たち…。

かの有名なシーンですね。

リリパット・アーミー(こびとの国)にたどり着いたガリバーは、そこでさまざまな困難を乗り越えながら、こびとたちと心を通わせ、彼らの戦争を助け…と物語は進んでいく。…大小様々なギャグを織り交ぜながらね。

その頃、ガリバーの嘘を知った(彼は、偽の旅行記を書いて、編集者をだましていたのだ)編集者が、彼を追いかけてやってきて、同じように遭難し、こびとの国にたどりつく。

ふたりは再会し、一緒にこびとの国のために、闘う…というか、「戦争はよくないよ。もっと楽しいことしよう」みたいな箴言をして、こびとの国と、「いみきらわれしものの国」(こびとの国の敵国)の間を取り持つ…。

これは要所要所で笑わせていくのがテーマだから、ストーリーはそれほど重要じゃないかな。

戦争はよくない…もっと楽しもうぜ…というのが、テーマと言えばテーマだけど。

…ということで他愛のない作品。子供と笑ってみるのがいいだろうな。

こびとの国や巨人の国、そこここで起こる奇妙な事件、まぬけな登場人物たちは適度に面白いし、そして、全部わりと、やさしい目線だ。

「貧しいから乳児を食用に」なんて、ブラック過ぎることを言い出した原作者スイフトのような、きつすぎるジョークはない。

なので、楽しい反面、あまりにそれだけで、食い足りない感じだった。

なので、もっと「make me think」な、考えさせる作品が見たくて、次は、「まほろ駅前多田便利軒」を選んだのでした。

成田到着まで、3時間くらいの機内にて…。

その感想はまた、明日。