本多劇場で、大人計画の「ウエルカムニッポン」を見ました。
補助席でしたが、ステージから3列目くらいで、俳優さんたちがとても近くて、かぶりつきというのでしょうか、存在感が迫ってきてよかったです。
舞台は、2011年の4月くらいの設定で、震災にゆれる東京のわだちく(足立区を想像させる)にひとりのアメリカ人女性がやってくるところから始まります。
震災後は、一気に外国人がいなくなった日本にわざわざやってくるアメリカ人。彼女は、ニューヨークの9.11のテロで、自分を救ってくれた日本人に会いに来た、という設定です。
随分、ジャーリスティックな始まりではないですか。大人計画らしからぬ。
やっぱり、震災以後は、「生き方を変えました」という発言をする文化人が多かったし、震災や原発をテーマに作品を作るひとも多かったので、なるほど、松尾スズキさんもか…と思うほどでした。
でも、たぶん、そうじゃないだろなーとはうすうす想像しましたけど、結局、どっちだったかはわかりません。
もちろん、物語のなかに、311の震災や911のテロのことが出てくるのだから、なんらかの「答え」であるという見方もできるけど、たぶん、そうじゃない気もします。
なぜなら、1945のヒットラーの話まで出てくるので、そうなってくると、じゃあ、これはあの戦争がテーマなの?と幼き誤解を生みそうです。
そうじゃないでしょう…と思うところです。
東京のはずれ、すぐそこは埼玉という、あれた町、わだち区に暮らす、ダメ人間たちの物語。これでもかと彼らのダめっぷりが描かれます。日本に憧れ、日本人に救いを求めてやってきた、アメリカ人の女性は、そのあまりのダメっぷりに失望しつつ、それどころか、どんどんひどい目にあうというお話でもあります。
来日したアメリカ人女性の物語であると同時に彼女を狂言回しにしたてた、「わだちくに暮らすひとたちのダメっぷり」をあぶり出す物語でもありました。
ここで暮らすひとたちは、実際、震災や原発の影響も心配もなかったのように、相変わらずのダメっぷりで生きている。男も女もとことんダメ。
みんなちがって、みんなダメ
どころか、みんな似たようにみんなダメ です。
その人間のくずっぷりが愛おしい…とはいえません。そういう嘘は言えませんよ。
笑うだけです、そのダメぶりに。非人間的な言動に。
震災以後、きずな とか たすけあい とか にほんはひとつ みたいな言葉があふれたことに対する、解答のようでもあります。
そのようなわけで、黒い笑いを楽しんで参りました。