山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「セックスの向こう側 AV男優という生き方」



映画「セックスの向こう側 AV男優という生き方」を見てきた。

友人でもある、映画監督の高原秀和さんが、AV男優20名に取材して作った、ドキュメンタリー映画です。

この作品については2通りの思いがある。ひとつは、AVを通して考える、セックスについてで、もうひとつは、ドキュメンタリーってどうあるべき?…というか、演出論に関するもの。

「ドキュメンタリーとは?」というテーマで書き始めると、非常にコアな話になってくるので、次回、じっくり取り組むとして、まずは、内容について。

AV=アダルトビデオについては、その存在は知っていても、殆どの女性にとっては未知の世界というか、さほど興味のない世界ではないだろうか。自分は、学生の時、ポルノ小説を書いていたくらいだし、「性愛」は大きなテーマなので、テレビのドキュメンタリーでAV女優を取材したこともあるし、プライベートでも割とよくAVを見て来た。

性愛を考える…という大義名分もあったけど、大きくは、「男はセックスに何を求めているのか?」を知りたかったから。AVで行われている…あんなことや、こんなこと(エロいことを適当に想像してください)を多くの男性は求めているんじゃないかって思っていたわけです。ですから、AVを見て勉強したんですね。(で、実行したりして…以下は、機会があればまた…)。
 
話がそれましたが、そんなAVを支えている男優たち。いわば、セックスを売り物にして生きている彼ら。それぞれがAV男優になったいきさつ、プライベートでのセックスとAVとの違いなどについて、忌憚なく、どんどん語ります。あまりに正直で見ているこっちが、恥ずかしくなるほど。

一緒に見ていた女子は、「怖くなった」と言ってた。

そこで、ちょっと考えてしまった。これがもし、AV女優だったら同じように、明るく、半分笑いながら、楽しそうにセックスを語れるのだろうかって。

今の女性は性的に自由になって、AVに出るのにそれほどハードルを感じていない子も多いと聞く。それでも、女性にとって、人前で裸をさらすこと、セックスを見せること、売ることは、とてもハードルが高いことだし、1度やってしまったら、元に戻れないのではないか…という不安をかき立てるものでもある。

が。

取材されていたAV男優たちにはそれがほとんど感じられなかった。自らの仕事を恥じることなく、笑いながら楽しそうに語る。それは、セックスを売り物にすることにつきまとう、暗さが、実はこちら側の思い込みに過ぎなかったんじゃないかって思わせるほど。自分は知らず知らずのうちに、「セックスを売り物にする人は後ろめたさを背負うはず」と思いこんでいたのではないかと、自分を振り返りたくなった。いつも、どこかで、セックスが過大評価されすぎて、単なる交わりがまるで人生を変える一大事のように語られることに、意味を持たされすぎることに、いい加減、嫌気がさしていたというのに。そんなに大騒ぎすることなのか。たかがセックスじゃないか…って言いたかったはずなのに。

だけど。

4000人とか6000人とかの女性と交わったという彼らが、一点の曇りナシ!と朗らかに語っているのを見ると、そんな思いが揺らぐ。

私が知りたかったのは、たくさんの女性とセックスすることと、それを人前で演じることを続けたとき、それが決定的な影響を与えるのか、どうかってこと。

何かを変えてしまうのではないか、ってこと。

だって、女性はその対価をずっと支払い続けてきたから。

画面のなかの彼らが、その答えになっていたかどうかはわからない。
一緒に見に行った女子が、「少し怖かった」という気持ちもわかった。あまりに悪気なく、あからさまに多くのセックスを語る男に、恐怖がある。その恐怖の寄りどころは、彼らの「負い目のなさ」から来るのかもしれないけど。

セックスを生業にすることに関して、まだまだ(あるいはずっと?)、男性と女性は非対称なんだなあとしみじみ思わせる作品でした。

2月23日(土)より、渋谷アップリンクにて、レイトショー。
興味のある方はぜひ!
 公式HP 「セックスの向こう側 AV男優という生き方」