20年近くテレビのディレクターをやってきた。ドキュメンタリーからドラマ、旅もの、科学番組、ほんとにたくさん。ちょっと考えると、テレビの方が即効性もあるし、もっと多くのヒトに見てもらえる。コツコツ小説書いて本出すより、よさそうにも見える。実際、出版界の方々はテレビのヒトに対して、偏見というか軽蔑と言うか嫉妬というか、独特の印象を持っているように思える。それはメディアとしてもはやテレビのほうが影響力が強いって思っているからだと思う。まあ、事実ではある。
そのせいか、初めて小説を書いた頃、よく「山田さんはテレビのヒトだから」と言われた。そこに込められたのは、「ちょっと軽め」「すぐに儲かる」「受ければいいと思っている」という侮蔑の感情だと思う。テレビのひとだったから小説を書こうと思った部分もあるけど、テレビのヒトだった分、ストレートに取り上げてもらえなかったのではないかという疑いも持っている。出版界のひとってテレビ嫌いなんですね、基本的に。まあ、仕方ないけど。
ところで、文学部などに進む人やちょっと本が好きな人だったら、一度は『作家になろう』と思ったことがあるだろう。多感な十代や大学生の頃まで。でも、それを引っ張るひとはそんなにいない。私もそれほど強く作家になろうと思っていたわけではなかった。それが、なぜ、こんなことをしているかというと、ほんの少しのズレから始まると思う。それは、30代の半ばにあるテレビドラマを作っていた時、かなり最低の経験をしたことによる。とにかくそのドラマは、劣悪な環境だった。劣悪だったけど、自分なりに必死につくったつもりだった。が、小さな事件から、その劣悪ぶりに拍車がかかり、次々に信じられない事件が起きた。それを指摘したところ、私はクビになった。さらに追い打ちをかけるような事件が続き・・。
さすがにここでは詳細は書けないけど、その時、こんな人たちと二度と仕事しないためにはどうしたらいいか、ってことを考えた。結局、自分がくずだから、くずな仕事しか回ってこないんだと思った。くずから抜け出して、自分の名前で仕事するしかないな、と気づいたのが最初の一歩でした。
以下次号。