山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

強迫的な彼女。

ひとりでパソコンにばかり向っていると、だんだん煮詰まってくるので、気分転換もこめて、今日は、中村うさぎさんを取材したドキュメンタリー映画「UTAKATA」を渋谷で見てきました

見て良かった、と思った。ずいぶん気持ちが楽になった。ああ、このひとはここまでやるんだな、見せるんだな、こういう強さは、マイケルムーアとか「スーパーサイズミー」の監督と同じだな、と思った。自己言及の勝利。

自分はどう思って、何をしているのか、っていうことをはっきりさせる清々しさがあった。

映像的には稚拙だし、インタビューももっと聞きたいし、他のメディアでは入りきれないところまで迫ってほしかったけど、そうなれば、監督の作品になったと思う。
これは、監督の作品にはなっていなかった。監督の作品なら、監督が中村うさぎをどう捉えたか、に重点が置かれるわけだけど、監督はまるで自覚がなく、ただ、興味のあるシーンを撮影して、並べていた。

が、それもよかったように思った。わからないんです、という提出の仕方。
わからないけど、なにかある、気になる、こんなことして、こんなことを言ってる女の人なんです、ということを必死で伝えようとしているのはわかった。それは好感がもてた。
多分、映像のプロではなく、興味があるから撮ってしまった、という素直な感じ。それがかえって良かったのかも。

だから作品としては未熟だったけど、それを飛び越える素材の強烈さがあったと思う。
なぜ、彼女はあそこまで強迫的なのか。

映画のなかで、中村うさぎさんは、精神科医から彼女の強迫神経症的状況を治せると言われた、と語っていた。
どうやって治すのか、私なら、その精神科医にインタビューに行く。
彼女を取り巻く人々にもっと丁寧にインタビューする。
週刊誌やテレビで伝えられる以上の中村さんの姿は映っていなかった。
それは残念だったけど、豊胸手術を撮影させ、何度も胸を見せるその姿には、やはり打たれた。彼女はなにがほしいのだろう。

けれども、カメラに裸を映させないだけで、同じようなことをしている女性はたくさんいて、美容整形はまだ、やっていないけど、自分も同じだと思った。

なぜ?なにがほしいの?

多くの女性は男性に肯定してもらわないと生きた心地がしない、さらに引退することもできないと思っている。その辛さと戦っている。

それを受け止めて、できるとこまでやり、その姿をさらす中村うさぎというひとの存在に、多くの女性は(少なくとも私は)少しはほっとできるんだと思う。
あそこまでいってもいいんだ、と。

「全身小説家」という映画に似ている。文句なしの現実の強さ、それを感じた。