山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

生まれつき不機嫌

私は、愛想が悪い。悪いらしい。
自慢できることではないけど、長く生きているので、ひとさまの客観評価くらいは知っている。

数年前、こんなことがあった。
あるテレビ番組の試写の時のこと。
私は、自分でつないだ番組を見せるために、編集室にいた。
その時、局のプロデューサーがひどく遅れてきた。

すると、遅れてきた局のプロデューサーに向かって、彼の部下がこう言ったのである。

「あんまり、待たせるから、山田さんはすごく不機嫌ですよ」と。

私は、びっくりした。

確かにかなりの時間、待たされたけど、待っている間にやることはたくさんあって、事実、編集作業を続けいてたので、まったく不機嫌ではなかった。いつも通りのつもりだった。
むしろ、編集がうまくいって、どちらかといえば上機嫌のつもりだった。
その部下のひととは初対面だった。

すると、すかさず、何年も一緒に仕事をしてきた現場のPが、言った。
「いえいえ、山田さんは全然怒ってなんかいません。彼女はふだんから愛想が悪いんです。
これが普通なんです」

ええ?2度びっくりである。

「そうなんですか、いやあ、安心しました」と言って部下は笑い、
「そうなんです。だから気にしないで下さい」と現場のpも笑った。

うう。私は笑えなかった。
そうなのか。私は自分では結構ご機嫌と思っているときでさえ、「この世の果て」のような「私なんて生まれてこなきゃよかった」という顔をしているのか。

もちろんさすがに、「笑顔が売りのわたし」的タイプだとは思っていなかったけど、こんなに「感じの悪い奴」と思われているとは。ショックだった。

しかし、本当のことをいえば、私は幼少の頃から不機嫌だったのだ。

私の祖父は画家であったが、私はよく絵のモデルになった。
当時は気づかなかったが、今、見返すと、祖父の描いた少女(わたし)はみんなすべて機嫌が悪そうである。

七五三の着物を来ても、フランス人形を抱いていても、花束を抱えてる絵画ですら、すべて、口を固く結び、やや上目づかいで、相手をにらんでいるのである。
祖父の画風はルノアール風なのだが、ちょっと想像してみてほしい。

印象派の光あふれるキャンバスに描かれた少女の肖像。
しかし、表情はみんな、むかついている。

これらを見る時、祖父にやられたなァーと思う。
彼は自分の孫娘の真髄を見抜いていたのだ。

私だって子供だったのだから、大笑いすることだってあったろうに。
けれど、私の肖像画はすべて、不機嫌である。

不機嫌がこいつの基本的感情である。
その肖像画はそう語っている。
まったく、正しいので、天国の祖父に苦笑いを送るばかりなのだった。