山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

レースクィーンだった。

かつて、よく連れ立って遊んでいた女友達がいた。
そういう時、知り合ったひとから、
「なんで、ふたりは友達なの?」と聞かれることがある。
私たちは答えた。
「昔、レースクィーンやってて、その時の同期」

こう話すとたいていの男は身を乗り出すのだった。
へえ、今はこんなだけど、当時はそれなりにきれいだったのかもなあ~とか。
にわかに、場が盛り上がるのだった。

私たちは、雨の日のレース場の寒さや、ピタピタしたミニのワンピースの着心地の悪さについて話し、傘をもって立つポーズをやってみたりした。

目の前にいるのは同じ女なのに、「かつてレースクィーンだった」というだけでずいぶんと扱いが変わるのだった。
面白いのでこの手はよく使った。

なんでそんなことになったかといえば、飲み仲間の男の話がきっかけだった。
こいつは女たらしで知られており、こいつの「たらし話」はたいてい聞き飽きていたので、あまり相手にされていなかった。
が、ある時、状況が変わった。そいつが
「今の彼女、レースクィーンなんだよ」と言い出したのである。
「へえ」
周りの男たちの目が輝きだし、急に場が色めきたった。

その時、私と女友達も同席していたわけだが、男たちの変化を見逃さなかった。
「そんなにレースクィーンっていいんだ」
と、私がむかつきながらいうと、男たちは「いいよなあ~」と唸った。
そこで、
「今までいわなかったけど、私たちだって○年前はレースクィーンだったんだよ。小さなチームの2軍だったけどさあ」
「え?そうなの」
男たちの視線が変わり、話の中心は私たちになった。
この時の仲間は映画関係者だったので、物語に関してはプロばかりである。
「っていうのは嘘だけど、昔やってた、ってだけでそんなに扱い変わるわけ?」
私は正直に聞いた。
中のひとりが言った。

「今、信じたもん。使えるよ、それ。だってさあ、レースクィーンってそんなに美人じゃなくてもなれるじゃん。ちょっとイヤらしい感じがあればOKでしょ。正直もえた」 むかつきながら、私たちは悟ったのだった。
「昔レースクィーンでした」は使える。
これのバージョンに、「準ミス○○」だった、がある。
○○はその日の気分で、あんまりきれいでもなさそうなものをいれる。
「雪国まいたけ」とか「足裏マッサージ」とかね。
(自信のあるひとは、○○に「東京」でもニューヨークでもいれてください)

同じテーマに、元・銀座のホステス、スチュワーデス(最近はキャビンアテンダント)などがあり、これらも根強い人気である。
そういう過去がついただけで、男は色めきたつのだった。
(同じ人間なのにさあ、単純だよなあ)

なぜ、こんなことを書くかといえば、知り合いの会社に、「かつてSMクラブで働いていた」
という女子が入ってきた、と聞いたからである。

残念ながら彼女はすぐにやめてしまって、私は知己を得ることはできなかったけど、
う~ん、その過去は使えるのか?と疑問に思ったのでした。
まあ、いろんな意味で使えるのかもしれないけど。

過去のある女つうのは、使えるらしい。
(私なんか、過去がすでに未来より長い予感・・とほほ)