山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

人生の救い方

なかなか出版できない作家志望の男・・・・・・・・1
アイデアが枯渇して新作ができない作家・・・・・・2
半年間、一文字も書けなくなってしまった作家・・・3

これらはみんな、映画に出てくる作家(もしくは作家志望者)たちのキャッチフレーズである。
言うまでもなく、こういったキャッチがあると、それだけで映画館にでかけてしまう。
弱いんですね、この手のキャラに。

で、1番は最近公開中の「サイドウエイ」の主人公。
2番が「ネバーランド」の主人公で、
3番は、「みんな誰かの愛しいひと」の主人公の父親。

キャラとしては、「書けない作家」「うまくいかない作家」は魅力的。ポールオースターの小説にも、よく出てくるよね。
ひとは(観客は)、うまくいっている上首尾の主人公より、なにごともうまくいかない、へとへとの主人公にシンパシーを持つ。
そして、映画の流れとともに、主人公が立ち直って行くのをいっしょに体験する。
それでさっぱりして、目の前にある、困難な状況が映画のようにいつか解決すると信じて、一時的に救われるというわけだ。

人生は長いから、しょ中うまくいかないことや困ったことが起こる。
だから、いつも「大丈夫かもよ」と言ってくれるカンフル剤のような物語が必要になってくる。そのためだけじゃないけど、小説にも映画にもそんな役割がある。

そして、もうひとつ、ひとを救うのは、ひと、ですね。

昨夜は、20年来の友人たち6名と久しぶりに酒盛り。
(男3女3ってまるで合コンみたいだけど、全くちがうな)

すべて、テレビ業界で生きながらえてきたひとたちだ。
それぞれが悩みを抱え、うまくいかないあれこれを酔いに任せてしゃべり倒す。
これって、ようするにグループセラピーだよな、と。

結局、なにひとつ解決されないんだけど、
大変なのは、おまえだけじゃない、ってことで、一晩くらいゆっくり眠れたりする。
もちろん、相変わらずの翌朝を迎えるわけだが
(私の場合は、二日酔いという困難まで加わり)
それでも、なんとか、気をとりなおして、やってみるか、という気分になる。

この繰り返し。
長く生きて思うのは、困った時に駆け込める映画や小説をうまく見つけるコツと、
くだらないバカ話をとことん聞いてくれる、肩書きや利害関係がなくても
続く友達をどれくらい確保できるかにかかっているかも。

「サイドウエイ」にもそんな友情が出てくる。
ダメ男とダメ男の友情。
角田光代さんの「対岸の彼女」にしろ、
今、トレンド(っていうのも古いけど)は案外、「友情」かもね。

もうさあ、愛とか恋とか、おなかいっぱいって感じありませんか?
恋は人生を豊かにもするけど、たいてい破壊されるし、
愛なんて、あれば退屈、見つけるのは至難の技。

若者の恋愛ばなれが理解できるというもの。
そういえば、「野ブタ。をプロデュース」にしろ、
綿矢さんの「蹴りたい背中」にしろ、
若者が描く若者に受ける小説って、もう、テーマは恋愛じゃなくなってる。

恋愛ってもう、オフ・トレンド?

あ、二日酔いのために、テーマが推移してすみません。
まとめは、
人生を救うのは、恋愛じゃなくて、友情だよん、というお話でした。
マル。