山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

そこにいたひとだけが持つ熱



写真は、阿川大樹さんのデビュー作で、ダイヤモンド経済小説大賞受賞作!
12月12日発売!

この世には不思議な縁がある。
ほんのささいなことで、つながったり、つながらなかったりする。
この本の著者、阿川さんとの関係も不思議だ。

私は、2年前、小学館文庫小説賞というのをもらった。このときの最終候補者のひとりが(全部で5人くらいいた)が、阿川さんだった。ふつう、このような関係の者同士が知り合うことはない。まして、「仲良くなる」ことも珍しいのかもしれない。

だって、もともとはライバルだ。というか、今だって出版市場という同じマーケットで闘うライバルといえなくもない。けどさ、そんな風にばっかり考えるのは悲しいよなあ。

阿川さんとの知り合ったのは、私のデビュー作に彼が、好意的な批評を書いてくれたことに始まる。まず、これはなかなかできるものではない。
「こんな奴の作品より自分の作品のがずっといい」と思うものだし、ましてや、好意的に書くなんて。

それがきっかけとなり、メールのやりとりをするようになった。境遇が似ていたせいもあるかもしれない。年齢も近いし、小学館の賞に出す前に、他のそれなりに大きな賞にひっかかったことがあることや、海によく行くこと、芸能界に近い場所にいることなどなどである。
(年齢より若く見られることも?笑)

だから、阿川さんのデビューが決まった時、ほんとに嬉しかった。長い間地道に書き続け、最終選考では常連でも、なかなか本が出ない苦しみは、自分が一番よくわかっていたから。

昨日、ご本人から本が届いた。シリコンバレーを舞台にしたビジネス小説(っていうのかな)のようだ。阿川さんはT大の出身であるし、実際、シリコンバレーでベンチャー企業をやっていたようなので、その体験や知識のばっちりつまった作品なんだと思う。

前に先輩の作家から言われたことがある。自分のよく知っている世界を書くと、インパクトが違うよ、と。そう、体験は強いのだ。彼が、シリコンバレーを舞台にした小説でデビューしたのは、そこにいて、働いたひとだけがわかる、熱やにおいや強さが、この小説に乗り移っているからだと思う。

彼の華々しい船出を喜びたい。

そして、お互い、デビューには時間かかったけど、がんばろーねと言いたい。