年が開けてから、あっという間に一週間過ぎる。早いものだなあ。
昼間は「アンジェラの灰」を読んで過ごす。ピューリッツアー賞作品。
『子どもの頃を振り返ると、よく生き延びたものだと思う。もちろん、惨めな子ども時代だった。だが、幸せな子ども時代なんて語る価値もない。アイルランド人の惨めな子ども時代は、普通の人の惨めな子ども時代より悪い。アイルランド人カトリック教徒の惨めな子ども時代は、それよりもっと悪い』
こんな感じで始まる、作者フランク・マコートのまさに「惨めな子ども時代」の回想である。
父親は飲んだくれで働かず、一家は食べるものもない。のに、母親は次々と妊娠し、生まれた子どももまた、次々と死んで行く。とことん貧しく、救いのない生活である。それが延々、延々、描かれていく。ちょっとさすがに、疲れる。
彼等の貧しさの原因は、政治的歴史的だったもするけど(イギリスとの戦争、内戦など)、一方で、父親が飲んだくれで働かないという個人的な理由にもよる。せめて、母親が避妊できたらと思うけど、当時は無理だったのだろう。(そもそもカトリックって避妊できない?)
しかし、まだ、上巻しかよんでいないので、今後の展開に期待したいところ。これまでは延々、貧しさばかりが描かれてストーリー上の変化はない。映像化しにくい作品。だって、起承転結がないんだもの。ただ、それでも読み続けられるのは、作者の視点でしょう。これを書いた時、作者はすでに60代後半、その時点での目線も入っていいかもしれないけど、作者はそれをいっさい、禁じて、当時のアイルランドの貧しい子ども目線で書き切っている。だからそこには、政治的批判もなければ、貧しさに対する恨みもあまりない。事実として受け止めているだけ。
貧しいけれど、家族みんなで暮らし、楽しい我が家でした・・なんてまとめ方はできない。もっと残酷な暮らしだ。解説には、家族一緒で幸せ的なものを匂わせる部分あったけど。
この貧しい一家の生活ぶりを読んでいると、自分の今の暮らしのありがたさが身にしみるってもの。たぶん、うちの犬のほうが、栄養のある食事をしているかもしれない。
でも、どうして、人生も終わりに近づき、作者はいきなり当時のことを書き始めたのかな。それには興味がある。
続きは下巻を読んでから。