山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

知らぬ間に浮かび上がるひととなり。

恐ろしい(かもしれない)体験をしました。

ちょっと気になる本があったので、いつものようにアマゾンで検索しました。
「クローゼットの認識論」というジェンダーの関係の本。でもってその関連本なども検索し、レビューを読んでいました。

すると、かなり過激なレビューを書いているひとがいたわけだ。知的な文章ではあるけど、なんというか、恨みすさまじ・・って感じのレビューだったわけです。で、このひと、アマゾンに200以上のレビューを書いているので、なんとなく、他にはどんなことを書いているのだろうと読んでいったわけです。(全部読むわたしもわたしだが)

するとですね、最初は女性かと思っていたら、中年の男性(たぶん40代後半~50代)であることがわかりました。で、読んでいる本をまとめると、まず、フェミニズム関係の本について、たくさんレビューを書いているんだけど、これがすさまじく、全否定で恐ろしい。いわく、自分はかつて女性学を学び、ひどいめにあった・・と。フェミニズムって机上の空論で意味がない・・とかさんざん。さらに、カルト関係の団体から、信者を助ける仕事もしていたなども経歴もわかる。

現在は、どちらとも関係のない仕事をして、結婚し、二人の子持ちであるそうだ。でもって、大学教授に強いコンプレックスをもっていることも。フェミニズムの本を批判するとき、繰り返し、「自分は結婚して、幸せで、子供をもって初めて、女は女らしく勝手に育つことがわかった」という経験論を何度も書いているんですね。

この人の購買傾向をまとめると、

1)女性学関係・・・常に批判の対象として。
2)自己啓発本・・・割と絶賛
3)癒し系漫画・癒し系アニメ・・・かなり絶賛
4)クラシックCD・・・・・クラシック=上流?という意識?
5)オフコース、などのニューミュージック・・・自分は恋もわかる男。
6)ハワイのガイド・・・・家族でハワイに行けるくらいに裕福で家族円満。

とだいたいこんな感じなんですね。 女性学については、いつも批判的なんだけど、自己啓発本の、ポジティブシンキング系にわりと傾倒している。宮崎アニメのファンであること、クラシック音楽を聴いていることに誇りを持っている風情があり、家族でこれまで、2、3回、ハワイに旅行したことがあるくらいの暮らしぶりであることもわかる。

購入した本とCDだけでそのひとすべてがわかるわけではないけど、どんなひとか想像がつく。
若い頃、女性学やカルト教団の近くにいたってことから、どこか、自分より下位のものに手を差し出すことの好きな男の姿が浮かびあがる。一方で、自己啓発本を手放せない自信のなさ、弱さもある。そして、大学教授批判やクラシック礼賛から、権威に実は弱いこともわかってしまう。

「子供を産んだこともないくせになにがわかるんだ」とボーボワールを全否定しちゃうところもすごい、(だったら、あんたも男なんだから、女のこと、なにひとついえないでしょ)

でまあ、この奇妙な男はともかく、このようにして、購買リストによって、そのひとのありようがわかってしまうことが恐ろしいなあと思ったのだった。
もちろん、この男も実は風俗フリークだったりするかもしれないけど、そこまではアマゾンでは追跡できないもね。しかし、一面をとらえていることは確かなんだ。

自分だって、こんなふうに、毎日に日常をさらしているわけだから、きっと「私像」はすでに把握されているよね。ま、いいけど。

ネット社会の怖さとおもしろさをかみしめた一日。