山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

安い涙はもういらない。

渋谷で「明日の記憶」を見ました。

大ヒットと聞いていたので、その具合を見に行く・・という心づもりもありましたが、う~ん。
確かに、平日のお昼時にしては、日頃映画館では見かけないような、年配の観客が多かったです。しかし、思っていたのとは違った映画でした。年配の客を集めているとか、夫婦愛の物語だとか、難病モノと聞いていたので、ここ数年流行の「お涙頂戴モノ」ではなかろうかと思っていたわけです。

しかし、違いました。まず、結構救いのない映画です。不治の病にかかって、治らぬまま、悪化していく、というのが、ストーリーです。お涙モノの定番である、「奇跡」が起こったり、「愛」の力で、甦ったりはしません。病気にかかった患者と家族が迎えるであろう軌跡が、リアルに描かれていく。大げさな「夫婦愛」もなければ、心温まるエピソードもありませんでした。

では、なぜヒットしているのだろう。
答えは渡辺謙さん。この映画は、渡辺謙という役者を見に行く映画なんです。ストーリーがぶっとぶ存在感がありました。謙さんに以外の役者が、全員脇に見える。それくらい、渡辺謙、いえ、主人公の佐伯マサユキが、強烈なんです。

主役を見に行く映画というのは、かつて、たくさんあったと思うのですが、まさに、そういう映画の原点のような作品でした。
また、渡辺謙さんがいいんだよなあ。この方、こんなにかっこよかったけ?とにかく、目が離せない。
歌舞伎などで、ひいきの役者が出てきたときに、声をかけるように、「よ、渡辺や!」と言いたくなるくらいだった。

その強さが、客をひっぱる。お涙頂戴モノの安い涙を期待していったら、ショックを受けるのではないかしら。
とにかく、渡辺謙さんの演技に圧倒された映画でした。