山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

才能のあるなしの残酷さと分かれ道

渋谷で「ハチミツとクローバー」を見る。
ずっとヤボ用ばかりで、映画がきれてた感じがして、とにかくなんか見たかった。たまたま時間があったのが、この作品だった。原作の漫画は読んでないけど、予告編などから、美大の学生の物語・・・という空気に惹かれていたのだ。

主人公の竹本は、建築学科に在籍する、美大らしからぬ割と普通っぽい学生。彼が一目惚れするのが、蒼井優演じる、才能あふれる油絵科の少女。これに、海外放浪から帰ってきた、こちらも才能あふれる、彫刻を専攻する、美男子(伊勢谷が演じている)と、ストーカーの学生、さらに彼をストーカーする女子大生がからみ、みんなが片思いのまま、絵を描いたり、彫刻を作ったり、バイトしたりで、時間が過ぎていく。

松任谷由実さんの曲に「悲しいほどお天気」というのがあるが、美大など、わかりやすく芸術を学ぶところだと、才能のあるなしや、芸術を生涯やっていくかどうかって部分が試されていく。つまり、美大に入ったからといって、みんながみんな、芸術で一生喰っていけるわけではないし、そういうつもりのないひとだっている。

「悲しいほどお天気」では、普通の人生を選んだ美大出身の女性が、同級生で画家になった友人から届いた個展の案内を見て、「ずっとみんな一緒に歩いていけると思っていた」と、学生時代を回想するわけだが、大学の四年間というのは、そういう意味で幸福でもある一方で、その後の人生を決める時間でもあるのだよな。

「ハチクロ」のなかでは、そこらへんの「痛さ」についてはあまり言及されず、いや、ハチクロのメンバーたちは、美術の延長線上の仕事についていくわけだ。誰も普通のサラリーマンになったりしない。そして、彼らにとって、恋愛は最重要のパートではないみたいだ。なんとなく恋をしつつも、それが劇的に発展しない。その部分だけみていると、中学生か?(あるいは今なら小学生?)って気分になるけど、最近の映画も小説も「つきつめない」というのが、お決まりなのだと思う。真実というのはきついから、それを大画面でまで見るのはごめんだ、ということだろうか。

堺雅人という俳優さん好きだし、伊勢谷くんのあまりのハンサムぶり、あまりのかっこよさ、それを上回る芝居のうまさに、クラクラしながら見た。

そんなわけで、久しぶりに映画見られて幸せ。やっぱり、家のなかの片付けやインテリアもいいけど、映画がないと、身体がひからびていくように思った。いつも物語を浴びていたいのね。