相変わらず、編集をしているのですが、私たちテレビ業界では、「素材は命より大事…」と言ったりします。
素材…というのは、撮影したもののことで、昔の映画だったら、フィルム、少し前のテレビ業界だったら、ビデオテープ、そして、現在は、カードだったり、ハードディスクだったりのことです。
そこに、撮影したものが映っているわけです。
それを素材と呼びます。
ですから、素材はとても大事。
この素材をもとに編集して作品に仕上げるわけです。
小説家やライターとちがって、どんなすごいものを取材しても、映像がなければ、私たちはゼロです。
紙媒体なら、あとからいくらでも書けますが、テレビ、映画は映像、映っているものがすべて。
だから、素材は非常に大事。命より大事、という比喩が成立するゆえんです。
でも。
でも。
でも、やっぱり、比喩としても、私は「素材は命より大事」とは言いたくないなーと思います。
そもそも、テレビ番組を作る、映画を作る、というのは、ひとが生きていく楽しみや糧のためにあるわけで、そこで描かれるのは、言ってみれば、生きるってたいへんだけど、いいよね、っていう態度だと思います。
生きるっていいよね、命って大事だよね、ってことが基本であるのだから、それを作るためのものが命より大事であっていいはずがない。
どんなに価値のある芸術作品、ピカソの絵でもミケランジェロの彫刻でも、それよりも、今、生きている命のが大事。絶対大事だと思う。
そうじゃなかったら、芸術の意味なんてない。意味ない。
そんなことをですね、編集しながら、考えました。