山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

本谷有希子さんの芝居はすごい。



夜、撮ったので光量が少なくて申し訳ない。犬は獣であるというお写真。かみつき合う親子。

さて、本日は青山円形劇場に劇団本谷有希子の「遭難」を見に行く。初日です。
いやあ、すげえ面白かったっていうか、このひと、やっぱ天才だな。天才ってこういうひとをいうのよねえと本を読んでも芝居を見ても思う。考えて作っているのではなく、呼吸するように出てくるものの息吹が天賦のものなのでしょう。

笑いのセンスも冴えてるし、セリフも構成もうまいよお。チケット完売だから、見に行けないひとも多いと思うので、ざっくりストーリーを紹介すると、舞台は旧校舎に隔離された中学2年の担任たちの職員室。ひとりの中学生が飛び降り自殺したらしく、一命はとりとめたものの、その母親が、担任の教師に責任をとれと迫るところから始まる。自殺した少年は、自殺の前に、担任に手紙を書いていたらしい。それが無視されたので、自殺したんだ・・と母親は迫るわけである。

これをきっかけに、同じ中2の担任の教師4人たちのそれぞれの痛みというかおかしさというかが、ほころびでていき・・というストーリー。テーマはトラウマ(トラウマのばかばかしさ)ってことらしいけど、こういうテーマをもってくるところが、今のひとって気がする。

いじめや鬱病やリストカットっていうのは、私が中学生の頃から確かにあったけど、当時は、やはりそういうことするのは「特殊なひと」であったと思う。けど、今や鬱病なんて心の風邪ですってことになってる。いじめも日常的で特別へんなこだけがいじめられるわけではない。そして、事件が起こると事件そのものより、どのようにマスコミに取材されるかってことを一般人が異常に気にする。ここらへんも私が子供のころには考えられなかったことだ。そういう空気のなかで、今のこは育っていくのよね。

それから、恋愛の比率の低さ。本谷さんの小説もそうだけど、恋愛なんて下位の出来事なんだよね。いまの中学生にとって。寝たかどうかとか、そういうの別どってことないし、恋愛などではなにも解決できないって荒野をすでに歩いている。ここらへんが、今でも、純愛は儲かると思ってるクセエオヤジにはついてこれないところだろうなあ。

いやあ、とにかく良かったんだけど、ただ、やはり、最後のまとめかたが今ひとつだったのではないかしら。こういうテーマで、風呂敷を広げて、要所要所で面白いし斬新なんだけど、問題はそれをどうまとめるかだよね。でも、こういう問題に解決はないわけだから、まとめにくい。だから、答えを観客に想像させるというのはよくある手だけど、そういう解決にはなっていなかったけど、やや、食い足りない気はした。ラストシーンのカタルシスはちょっとなかった。それが狙いかもしれないけど、どこかで、自分なりの結論を見せてほしいと思うのは、私が年寄りだから?

でもさ、「トランスアメリカ」や「クラッシュ」(今年見た映画のなかでピカイチだった2作)は、ちゃんと監督の結論が描かれていたと思う。結論を描けるのは、人生経験のゆえかなあ。そう考えて、いたずらに年をとってしまった自分にも、道があると胸をなで下ろすことにしよう。

dvd買ってしまったよ。(本は全部もってるから、これまでも芝居のDVD買いました)

う~ん、しかし良かった。今年見た芝居のなかで、トップ独走。ぱちぱち。