山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

連合赤軍

新宿にて、映画「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」を見てきました。

いや~やぱっり落ち込みました。連合赤軍を描いたものは、以前に映画「光の雨」を見ていたので、だいたいの筋やそこで行われた凄惨なリンチについては、すでに知っていたため、そのこと自体に今更驚くということはないのですが、それでも、やっぱり、見ていると苦しくなりました。なんで、そこまでいってしまうのだろう、誰もとめることはできなかったんだろうかと千々に思いは乱れました。

リンチ部分は凄惨だけど、ここで起こることは、以前見たドイツ映画…タイトルを忘れたけど、心理学の実験のために、囚人と看守役になって、仮の監獄で暮らすうちに、看守がどんどん囚人たちにひどい扱いをし、しまいには殺人まで起こる内容の映画…を思い出した。(確か、実際に起こった事件を題材にしていた)。閉塞情況で、一方的な権力をもった人間がしでかすこと…それは政治的背景や人種や時代を超えるものがあって、人間の恐ろしさみたいなものがかいま見える。

が、そのリンチの凄惨さではなくて、やぱっり根本的なところに目をむけないといけないと思いました。殺人が目的で山ごもりしていたわけではなく、スタートラインでは、それぞれに高い理想があったはずなのですから。

しかし。あれから40年近い歳月が流れて、ソ連や東ヨーロッパの共産主義は次々崩壊して、資本主義はゆきつくところまで来てしまった。今では学生運動をやっている学生は極端に少数派なんだろうなあ。

あのとき、学生運動をしたひとたちは、この時代の変化をどういうふうに見ているのかなあ。いろいろ闘ったけど、無駄だった…って思うのかな。

以前、韓国にいったとき、韓国の文芸評論家のひとが言ってました。「日本では学生運動は負けたでしょう。でも、韓国の学生運動は勝利して、軍事政権を倒したんですよ。そこが日本とはちがう」と。私はその時まで、韓国の現代史をあまりよく知らなかったので、とても衝撃を受けました。この映画が始まるまえの予告編で、「光州事件」を題材にした映画も近日公開らしいのを知って、複雑な気持ちになりました。

すっかり、政治的視点と関わりを持たずに暮らしているので、ひやっとします。自己批判せよ!って言われたみたいに。

もし、70年代に赤軍の革命が成功していたら、日本ってどうなっていたのだろう。例え、その頃、成功しても、今頃、民主化してたのかな。それでも、私の人生もずいぶんちがったものだっただろうな。(歴史にもしもはないから、想像しても仕方ないけど)。

でも。
いつの時代も若者は、理想を信じて動き出すんだなあとまったくべつの感慨もありました。90年代にはオウム真理教事件があったけど、彼らだって、自分たちの真理による革命を起こそうとしていたんだろうなあ。宗教もイデオロギーのひとつだろうし。

今の若者は、このように徒党を組むってことがなくなったのかな。社会を変えようって考え方は減っているかもしれないな。どちらかといえば、「自分を変えよう」にシフトしている。社会は変えられっこないのだから、自分を変えて、うまく生き抜こうって考え方がメインのような気がする。なぜって、自己啓発本みたいな本がしょちゅうベストセラーになるよね。(マルクスの本がベストセラーだった時代だってあっただろうに。)

「自分をどうするか?」というのは大テーマだけど、「社会をどーするか?」と考えるひとは減っているのではないかしら。自分もそうだけど。それは、「社会なんか変えられっこない」という諦めというか、そういう空気が漂っているのだろう。が、歴史を振り返れば、社会は突然変わったりするんだよね。

それも、誰かが「変えよう」とした結果なんだろうな。あるいは、社会を変えようとしたわけじゃなく、自分の信じることをやっていたら、社会が変わっていた…ということもあるのかもしれない。

ともあれ。

なんともやるせない気分になった。それは「あの犠牲は無駄じゃなかった」というカタルシスには持って行けない出来事だったからなんだろうか。わからない。それとも、人間の狂気というか、愚かさというか、それを存分に見せられたせいだろうか。

ちょっと見方を変えてみよう。この事件の経過を、政府側というか警察側から見てみると、彼らの作戦勝ちにも見える。次々と検挙して、彼らを追い詰めていった結果、集団が内部から崩壊していったんだ。武装訓練をもっと冷徹に行い、仲間割れせずに、プロの兵士を作り上げて、テロを行ったら、日本政府が倒れることはなかったかもしれなけど、もっと多大な犠牲を強いられただろう。

が、警察そのほかが彼らを追い詰めることによって、自ら手を下さなくても、内部崩壊していったのだ。浅間山荘の立てこもりは最後のあがきであって、リンチ殺人が始まった時点で内部崩壊は始まり、終わるのは時間の問題だったのだ。と考えるとなんともやるせないなあ。

ということで、映画の感想というより、事件の感想になってしまいました。「実録」とあるので、フィクション化することより、「なにがあったか」をストレートに知らせようとした映画だと解釈したので、事件への感想となりました。

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