ミラン・クンデラの「冗談」という小説を読んでいる。(まだ、途中)。
舞台は、1940年代末のチェコスロバキア。革命が起こり、共産主義国家になったばかりの頃である。と、書くと、今の時代とまったく関係なく、興味をもつひとはそれほど多くないかもしれない。
だが。
時代設定はそうなんだけど、そこで語られていることは、今でも充分通用する話である。主人公は、共産党員の若い大学生。ちょっとシニカルなところはあるけど、ごく普通の人物だった。が、片思いの女子大生の気をひくために、ちょっとした冗談を書き付けた葉書を彼女に送る。この、女子の気をひくために書いた「冗談」のおかげで、彼の運命は狂わされてしまうのである。
その女子大生は、冗談のわからない生真面目なタイプだったため、そして、それが「葉書」という他のひとにも読まれてしまうメディアだったため、主人公は、反革命分子と見なされ、大学は止めることになるし、党からも見放され、どんどんひどい目にあうのである。
まだ、途中だからここまでだけど、確かに旧ソ連や東欧の共産主義国家は、異常な監視社会で、ちょっとした発言で、地位を失うこともあったかもしれない。今だって軍事独裁国家などはそういうところもあるだろう。だけど、「よかった、日本は言論の自由が守られていて」と胸をなで下ろすのは早いよね。
ちょっとした発言で、自分の立場を失う…というのは、今の社会でも充分あり得る。タレントさんがラジオで発したひとことで、謹慎しないといけなくなったり、ブログが炎上したり、言論の自由は一応、守られているけど、自主規制というか、見えないしばりは結構ある。
ちょっとした冗談のつもりで、ブログに書いたひとことのせいで、やばいことになる可能性は充分ある。
いえ、見える規制も怖いけど、見えない規制も怖いよな。じわじわ効いてくるよねと思った次第。
小説としては、「冗談」は抜群に面白いですけどね。