山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

人生は長し。

今日は、昼間、まず、「LOVE30」という舞台を見に行きました。自分の映画に出演してくださって、松重豊さんが出演されているので。

いや~松重さんのシャボン玉のような恋、すてきでした。無骨な男の不器用な恋愛って感じで。ほんのりしました。松重さん、床屋さんの役でしたが、動きが本物の床屋さんみたいでさすがだと思いました。

その後、同じく渋谷にて、映画「愛を読むひと」を見ました。本当は、ミッキーロークの出ている「レスラー」見たかったんだけど、20時からで時間が空きすぎるし、自分の映画のPから、「年の差恋愛」「本が取り持つ話」ということで、「君の映画と似ている部分があるから、見て勉強しておくように」としつこく言われたのでみました。

この原作は、世界的ベストセラー「朗読者」ですから、自分も、かつて読んだことがありまして、自分の映画のPが言うように、確かに、「年の差恋愛」であり、「本」が介在する物語ではありますけれども、テーマの背後には、アウシュビッツの戦犯問題がありまして、自分の映画と一緒にするには、規模がちがうというか、事件の重大さが違うことをよく知っており、「一緒には語れないと思うけど…」と再三抵抗したのですが、結局見ました。非常に痛々しいお話であることをわかっていたので、正直、あまり見たくなかったのでした。

で、結果からいうと、やはり、見た後は、ずいぶんと落ち込みました。運命の過酷さや戦争の持つ、簡単には語れない罪や、ひとの弱さや悲しさなんかをずっしり考えてしまって。それと、人生の長さについても考えてしまった。人生が長いということを最近、しみじみ感じていたのですが、長いからこそ、奇妙な再会があり、関係を修復するチャンスもあり、失うこともあるのだと再認識したのでした。

それと、ふたりの主人公(30代の女性と15歳の少年)は、「本を読むこと」でつながっているのですが、二人が読む本が、かなり具体的で、その一節を聞いただけで、小説好きのひとなら、たいてい知っているものばかりでした。最初に読む本がレッシングの本なのには、ちょっとやられました。で、自分も映画のなかにいろいろ実在の本を登場させているのですが、中身にまで触れたのは一冊くらいしかなく(しかも、それはアウシュビッツ関連の本。なんという符合!)、もっと具体的に内容にふれても良かったかなーなんてことも考えました。

それから……やっぱり、自分の仕事のことを考えずにはいられませんでした。昼間見た「LOVE30」のなかに、一流の漫画家になると宣言していたのにエロ漫画家になった女性、数々のピアノコンクールに入賞しながらも、場末のピアノ教室の教師になっている男性などが出てきて、自分の境遇を嘆くわけです。はい、気持ちはよくわかります。エロ漫画家やピアノ教室の教師が必ずしもひどい職業ではないと思いますが、別のものを目指していたのに、そうなれなかった…ことを嘆いているのだと思います。自分の境遇を嘆くことについては、友人から「プロ並み」と言われている自分なので、気持ちはわかります。どんな境遇にあっても、自分は自分を嘆くタイプなので…。

その後、「愛を読むひと」を見たもので、「一生」について、考えてしまって。けれども、「愛を読むひと」のふたりが知りあって、ひと夏だけの恋をするのですが、そのはかなさがちょっといいなあと思いました。誰にも知られない、密室だけの恋。恋というより、最初は圧倒的性愛なんですけど、それが愛情に変化していく。けれども、それを育てることのできない種類の恋愛。その時だけの熱情みたいなもの。そういう恋愛ってあるよなあーっと。

そして、案外、そういう恋愛の思い出って、一生忘れないものかもしれない。案外人生を変えるのかもしれない…などと久しぶりに恋愛についても考えました。やっぱり、自分は見た後に自分の世界観がゆらぐような作品が好きです。多少、へんな部分あってもね。まだまだ、ゆさぶられたいのだな。

明日はテレビの編集。働かないとね。