山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「母なる証明」



昨日のことですが、時間があったので、伊東屋さんに行って、写真の文房具を買いました。どれもかわいいものですが、まずは、犬クリップ。精算などでつかうゼムクリップですが、「犬型」があったのでさっそく。これは精算などには使わず、大切なものをとじるときに使うことにしましょう。

それから、最近愛用しているマスキングテープも、新しいものを2つ買いました。ブルーのギンガムチェックと、ベージュのギンガムです。隣に置いてあるグリーンと赤のタータンチェックは、前から持っていたもの。このテープがあると、ノートにアレンジしたり、封書に貼り付けたり、とてもかわいくて便利。いろんな柄が欲しくなります。

あと、この日の一番の買い物は、LAMYというドイツのブランドの万年筆。手前の赤いキャップのもの。これ、試し書きしたらすごい書きやすくて、思わず購入。4000円くらいしたけど。なにしろ、手書きで手紙を書くのが好きなので、(むろん、電子メールも好きだが…)、筆記用具は常に必要なんですねー。書きやすくてデザインがいいものってなかなかないからね。

……と、映画「母なる証明」の感想の前振りが長くなりました。いや、映画と文房具はまったく関係ありませんが…。

そんなわけで、話題作、韓国の巨匠監督ポン・ジュノの「母なる証明」見て来ました。非常に緻密に計算された、密度の濃い映画でありました。まとわりつくような作品。

しかし。

手放しで喜べない部分がいくつか…。あらすじをざっと説明しますと、主人公は中年の女性で、彼女には、見た目はかなりかわいい20歳くらいの息子がおります。この息子、行動を見ていると、いわゆる知的障害者であります。軽度の。で、この母はこの息子を溺愛しているのですが、ある日、ふたりの暮らす町で女子高校生が殺されます。その犯人として、息子が逮捕されます。息子は、時々記憶があいまいになることがあることから、「事件を覚えてない」と言い、母は息子の無実を信じます。

母は、高額な料金を要求する弁護士に頼んでみたり、息子の遊び仲間の不良に頼んだりしながら、独自で真犯人捜しに乗り出します。その過剰な思い入れと行動は、「母の愛は海より深い」という言葉の通りです。

で、これからご覧になる方のために、詳細は書きませんが、母は息子を守るためなら、なんでもするわけです。で、事件が思わぬ方向に展開していくのですが、物語としてはたいへん面白く、良くできていると思います.

けど、映画のタイトルを「MOTHER」とし、邦題も「母なる証明」としたことに、ちょっと抵抗を感じます。つまり、それは、「母なるものは、子供のためにこんなことまでするんだよ」という教えに聞こえるからです。息子を溺愛する母親はたくさんいますけど、全部が全部そうではないし、過剰な「母性信仰」を強化するような気がします。殺人犯の息子をかばうばかりが母親ではないだろうに。

これは、あるひとりの愚直な女性の物語であって、全母親の物語ではない。なのに、「母なる証明」って…。

それから、もうひとつは、殺される女子高生について。彼女は、援助交際をしていたわけです。それゆえ、殺された…とも言えますけど、なぜ彼女が身をひさいでいたかといえば、両親がいなくて、認知症でアル中の祖母と暮らし、日々のお米にも困る生活だからです。福祉はどーなっているのだ?という気持ちになります。あと、警察の捜査もあまりにお粗末なので、母親が混乱することにもなるわけです。

現代のお話ですけど、韓国ってそんな、めちゃくちゃな国だったんでしょうか。自分が05年に訪れたときには、そんな印象なかったのですが。この映画の舞台は、戦後すぐくらいの混乱状況に見えました。

…といろいろ書きましたが、映画として優れ、それぞれの役者さんのまったくブレない演技、設定、音楽、どれも一級品でございました。ううむ。それだけに、「母親ってやっぱりそうなんだ」って印象を強くつけることに非常なる懸念を感じたのでした。

まあ、いいんだけどね。