山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「ブラック会社に勤めているんだが、俺はもう限界かもしれない」

風邪のため、自宅にて、休養をとっておりました。

が、夜になり、家に食べ物もなくなり、外へ出て行きましたとさ。で、結局、新宿へ行って、映画を見ようということになりました。目当ては実は、「ファッションが教えてくれること」でした。

ところが!
21時40分の回を見るために、21時35分頃到着したところ、満席で入れませんでした。

えーっ!

すごい大ヒットであります。「プラダを着た悪魔」のドキュメンタリー版という部分と実際、非常に良くできているらしく、ヒットにつながったようです。ううむ、良きものはきちんと当たるのだな…とうれしいような、恐ろしいような現実を受け止めました。

で、すごすごと帰るのもなんだし…ということで、マイケルジャクソンの映画を見ようとしたら、これも満席……え、え、映画って、今、キテるの?というか、新宿のバルト9っていっつも混んでるよねー。それはとてもいいことさ。

ということで、表題の「ブラック会社に勤めてるんだが、俺はもう限界かもしれない」を見て来ました。これだって、残り4席みたいな状態でした。監督はあの「キサラギ」の佐藤佑市氏だし、小池徹平だし、予告時代から、かならず見ようリストに入っていた作品なので、ちょっと早いけど見ました。

…ちょっと早いというのは、まだ、公開が始まったばかりだから、今、見なくても当分終わるまいということです。終わってしまいそうな作品から攻めていく…のが、基本ですから。

…とそんなことはともかく、「ブラック」。ふうむ。全体コメディではあるんですが、冷静に見るととても恐ろしいお話です。ホラーなどより、もっと怖いお話かもしれない。モダンホラーです。……意味、ちがう?

「ブラック会社」とは、やばい会社のことですね。主人公の小池徹平演じるマ男くん(本名を記憶できなかった……劇中で、ずっと「マ男」と呼ばれていたから)は、高校中退の元・ニートで、やっと見つけた会社に就職する。しかし、この会社、残業は当たり前、経費は落ちない。やばい社員ばかりのブラック会社だった。入社早々に過酷な業務に追われ、主人公は「限界」を感じるのだけど、やめるずにがんばる…というお話です。

小池徹平くんの演技がかわいらしく、彼を囲む同僚たちの変人ぶりも面白いのですが、しかし、その表面的な面白さに惑わされてはいけない…。だって、これ、非常にシリアスなお話でもあるからです。

主人公マ男くんは、高校時代、いじめられて中退したため、正確には、中卒。その後、ひきこもり、通信教育かなにかで、プログラマーの資格をとったひとです。そんな経歴の彼はなかなか就職先が見つからない。やっと見つけた先では、「ほとんど奴隷扱い」。苦労しながらも、彼は仕事にやりがいを見つけていくわけですが、劇中の説明にもあったように、コレは、一見華やか、一見最先端に見える、IT業界が、ものすごいピラミッド社会であることを示しています。

彼の勤める会社は、大手の下請けの下請けであり、そのような会社がたくさんあるため、過酷な条件を飲んで仕事を引き受けるしかない。よって、低額の給料で、不眠不休で働き続けることになるのだ。その先にあるのは、……なにもない。日々の仕事のみ。映画では、同僚たちとの交流が描かれるけれど、交流に一時の慰めを求めたところで、現実はちっとも変わってないのだ。

なんというか、この巨大、格差社会、巨大、マーケティング至上主義、大手ばかりが得をするシステムを実は描いています。主人公の父親の結末も含め、「底辺のやつはいつまでたっても底辺をさまようしかない」とでも言っているような辛らつさがあります。これをただすには、革命を起こすしかないように思いますが、登場人物たちは、現実を受け止め、現実のなかの小さな幸せを見つけて、過酷な仕事を引き受けていくのです。

なんか、とても残酷。それとも、社会とは、そういうものであり、革命を起こすより、今の暮らしのなかから、小さな幸せを見つけることが秘策ということなんでしょうか。基本コメディですが、社会的関心から見るとものすごい、深刻なドラマでありました。