山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

映画「ファッションが教えてくれること」

朝からテレビ番組のオフライン。しかし、強力な助っ人を得て、常識的な時間に終了。

なので、昨日見損なった、映画「ファッションが教えてくれること」を新宿バルト9まで見に行きました。今回は、上映40分前に到着したので、よい席をゲットできました。

で、上映。ふうむ。この映画は、ヒット作「プラダを着た悪魔」のモデルとなった、アメリカ版ヴォーグの編集長、アナ・ウインター(60歳!)のドキュメンタリーです。前評判も高く、単館上映ながら、ヒットしているとあって、見たかったのでした。

正直に言えば、思ったほどではなかった。ドキュメンタリーとしては、つめ甘い…と思いました。確かに、ファッションにとって、最も大切な9月号を前にしての、雑誌ができるまでを丹念に追っています。撮られたくないシーンもあったかもしれないけど、あますところなく見せているし、娘も家庭も映させている。これだけでも、充分ハードルは高かったかもしれない。

けれども、なぜ、アナ・ウインターが、ファッションにこだわるのか、雑誌が世界的に売れなくなっている現状をどう思っているのか…など、肝心なインタビューはなく、彼女の父親がイギリスのインテリジャーナリストだったり、兄弟姉妹もまた、優秀なひとたちであることは情報として披露されるけど、その程度で驚いていていいのだろうか。

アナと対比して描かれるのは、同じ時期にアメリカ版ヴォーグにやってきた、元・モデルのグレイス。ドキュメンタリーは、ヴォーグの編集方針を廻って、グレイスとアナの闘いのようすを見せていくんだけど、あの程度の闘いは、どんな雑誌、どんな番組を作っていく過程でもあるんじゃないだろうか。まあ、それを映させるかどうかっていうは大きいけど。

よくぞ、ここまで撮った!という感激はなかったし、アナ・ウインター恐るべし!と思えるシーンもなかったなあ。映画評の一部に、アナの魅力のひとつに決断の早さをあげていたけど、あの程度の決断って、どの雑誌のひとも普通にやっていると思うなあ。

それよりもっとグローバルな視点がほしかった。実際、ブランドモノは売れなくなっているし、毎年流行を決めてそれをはやらせていくファッション業界のあり方そのものが問われている時期に、自分の仕事をどう考えるのか…という質問しないのは、どうかと思う。NGだったのかもしれないけど、アナ・ウインター礼賛にしかみえないのは、どうなんだろう。

…と偉そうに書いてしまった。自分もドキュメンタリーたくさん撮ってきたので、ちょっと厳しいかもしれなかった。しかし、これもまた、アナのしかけた、ヴォーグ再生計画のひとつかもしれないな。ファッション誌が売れなくなり、ブランドに関心をしめすひとが減ったから、こういう方向から巻き返しを狙ったのかもしれない。

ヴォーグの最盛期だったら、撮らせなかっただろうからね。ようするに、「宣伝」なんじゃないか…と大人の世界を長く生きてきた私は、見終わってフト思うのだった。

だって、芸術的なファッション写真の使命ってもう終わっていると思いませんか?

そして、一番重大なことは、アナ・ウインターというひとがさほど、魅力的に見えなかったことだった。