山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

わたしの胸の痛み…。

実は、今日は、乳がん検査の結果発表の日でした。

昨年末、交通事故にあってから、右胸の奥が痛くなり、さわるとしこりのようなものがあるような気がして、「もしかして、乳ガンではないか」と思った次第です。ここでひとつ注意しておくと、ガンというものは、一般的に痛みはなく、痛いくらいだと相当進行しているということです。それくらいは自分もわかっています。

わかっていますが、自分の仮説はこうでした。

もともと、胸に小さいがん細胞があった。小さいので本人は無自覚であった。ところが、交通事故の打撲により、このがん細胞が刺激を受け、急激に成長。立派な取り返しのつかないガンになった。

このような仮説を元に、乳ガンの専門医のところを訪ねたわけです。先月のことでした。私の仮説を聞いた医師は、「このひと、バカなのか?」というあきれかえった表情を一瞬、浮かべ、すぐに消し、「ガンとはなにか」ときっちり説明してくださいました。

いわく、痛いからガンということは全然ない。痛いとしたらそれは乳腺炎とよばれるもので、ガンとは全く別のものである。さらに、「交通事故にあって、乳ガンになる」などということは、まったく、全然あり得ない。聞いたこともないし、理論的にもあり得ない。ガンは交通事故でできたりしません!

そこまで言われたら、さすがに自分の案を引っ込めるしかありません。けど、ないのかなあ、そういう刺激によって、体の部位がまったく違う動きをする…みたいなこと。だって、頭を打ったことで、記憶がなくなったり、別人格が出たり、タイムスリップしたり、超能力が生まれたり、男と女が入れ替わったりするんだから…、物語のなかでだけど……絶対ない、なんてことはないんじゃないか。

多少、憤然としている私に、医師は優しく語りかけました。

しこりもあるということだから診察しましょう…。

ということで、触診をしていただいたところ、わたしがしこりと呼んでいたものは全く発見されず、というか、その時点では、自分でもどれがしこりだったかわからなくなり、「そんなもの、ないじゃないか」という疑惑の目で見つめられました。「ちょっと頭のへんなひとなのか、やっぱり?」という視線です。

…いえ、ちがいます。ちゃんとした医師の目でございました。

とはいえ、エコーっていうのかな、ゼリーみたいなものを塗って、中身を調べるやつで見ると、言われてみれば、ちょっとへん!みたいな部分があることがわかりました。「これは、ガンのようなものではないですが、みたことのない感じのものです」「なんでしょう?」「さあ」「うひゃー心配!」

みたいなことから、マンモグラフィという、さらに詳しく調べる機械に、胸をかけることになりました。この機械は、胸を箱のようなものに押し込み、上下左右から押しつぶして撮影するという、ちょっと、SMなのか?というようなものです。実際、びっくりするほど痛いです。胸はつぶされるから、グラビアアイドルだったら、商売道具の型くずれが心配になるていのものです。

…なんてゆうことを言うんですか!

これによって、多くのガンが初期発見されてきたのですから、ふざけたことを言っている場合ではありません。失礼です。はい。ごめんなさい。

で、まあ、この検査をしたのが、先月の上旬でした。結果は一週間後に出るはずだったのですが、予約の時間に行ってみると、ものすごい混雑をしていて(見ていただいたのは、その世界では著名な先生でありました…)、1時間待っても、2時間待っても、自分の番が来ません。まさか、そんなに待たされるとは思わず、その後の予定を入れていたため、順番を待たずに帰ってしまいました。また、来ればいいや…と軽く考え…。

ところが、それが大きな間違いであることを知るのは、その後の話でした。翌日、あらためて予約を取ろうと電話したら、大人計画のチケット予約かと見紛うほどの人気です。今月はもう、予約いっぱいです。来月の中旬になりますねーと軽く言われました。すごい、人気劇団どころではありません。うーこの先生に映画の宣伝してもらったらよかったなーと思うほど。(冗談です…)。

で、次の診察日が今日になったわけでした。つまり一ヶ月以上先。ずい分待たされることになったのですが、最初のうちは心配しており、おーこれはいよいよやばいのかもしれない。もうすぐ映画が公開だというのに、これが最初で最後の作品になる?というか、初日まで生きていられるんだろうか。余命一ヶ月の映画監督として、これすらも宣伝に使ったほうがいいんじゃないか。あるいは、初日より先に死んじゃったほうが、初日は盛り上がるだろうなー。

"この日をどんなに楽しみにしていたことでしょう"って言われるよなあ。サトエリちゃんや柳楽くん、泣いて舞台挨拶とかしてくれるかなー…などと、ヒロイズムにひたっておりました。

ところが、思いこむと抜け出せないタチである一方で、目の前の忙しさに反応する身でもあり、結局、映画のほうが気になっていて、ガンのことは頭の片隅に追いやっておりました。映画の反応とか、宣伝とかいろいろあって、日々、忘れていきました。

で、初日も無事すみ、公開も日数を重ね、一段落ついた今日、診察に行ったのでした。これで、やばい病気だったらやだなー死ぬのかなー、かつて、「カタチチの女」が出てくる映画のプロットを書いたことあったけど、そんな風に笑っていた報いが来て、自分がカタチチになるのかなーとか想像をふくらませておりました。

で、結果。さんざんひっぱってなによ!と読者のみなさまも思いますよね。ひっぱるテーマか。いえ、引っ張ることがテーマじゃないんですけどねー。今日は、また、診察でどれほど待ってもいいように、分厚い本を持参、のちに約束は入れず、泊まる覚悟で行きました。(嘘です。19時からの芝居のチケットをとってあったので、病院に泊まるわけにはいきませんでした)。

で、1時間ほど待ったあと、診察。マンモグラフィの結果は、シロ。ふたたび、エコーをかけると、胸の奥にあったふしぎなものは、きれいに消え去っておりました。

なんだったのでしょう、あれは…。
あの、私の胸の痛み(比喩ではなく)はなんだったのでしょう。

まあ、要するに事故による打撲だったようです。しかし、先生も、乳房も打撲するんだ…と妙に納得してました。そういう凡例はあまりないそうです。

私が思うにそいつは、私の心配の影だったのかもしれません。真の胸の痛み……。嘘です。

…ということで、無事、健康であることがわかり、ほっと胸をなで下ろした次第です。そのあとは、新宿にて、「残念なお知らせ」という、「安心なお知らせ」を聞いたあとだからこそ、笑える芝居を見に行きました。最近、「次に仕事したいひとリスト」の上位にランクされている岩井秀人氏が出演していたからでした。

…長くなりましたので、この芝居の感想は、後日。

無事でよかったです。みなさま、お騒がせいたしました。