山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

熱のはな

自分の病気のことを書くのは、あんまりよくないような気がするけど…個人情報が漏れる…とか?…でも、書いちゃお。

私は、10年くらい前から、単純疱疹…別名、ヘルペス、古くは、熱の花、なる持病がある。ヘルペスには二種類あって、帯状疱疹と呼ばれるほうは、もっと重く、性器にできる場合もあり、性病の一種とされるので、ヘルペスと聞くと、ちょっとやらしい想像をするひともいるかもしれない。病気にやらしいもなにもないと思うけど、とりあえず、自分の持病は、そっちではなく、「単純」のほうである。

年に一度か二度、疲れたなーって時に、そいつは現れる。口のまわりや顔にできるひとが多いらしいが、自分の場合は、足である。なぜ、足なのかわからないけど、足なんだ…。初めて、これが出来たときは、なにか恐ろしい病気にかかったんだと思って、とても焦った。あるいは、知らないうちに、恐ろしい虫に刺されたんだと思った。小さなニキビみたいなんだけど、妙に痛くて、体全体もだるく、しかも、よく見ると、人面みたいに見えて、グロテスクで、不安をかき立てられた。

で、皮膚科に行って、「恐ろしい虫に刺されたらしい」と訴えると、「単純疱疹ですよ」と軽く言われ、クスリ飲めばすぐに治るから…と笑われた。実際、クスリを飲んでしまえば、すぐに治る。それだけのことである。

が。

この病、なにか独特のものがある。私の場合、非常にたいへんな時期には決してできない。例えば、去年の今頃は映画の準備をしていたし、その後は一ヶ月に及ぶ撮影、編集と、緊張と疲労の連続であった。けど、そういう時には顔を出さないのだ。いつ出来たかというと、7月である。映画の仕事が一段落ついたなーとほっとした途端に出たのだ。疲れマックスの時にはこなくて、疲れているけど、ちょっと休めるかも…と思った途端にやってくる。

実は、昨日からこいつが出た。今年は、映画の公開があって、それを乗り越えた2月にちょっとひきこもって、その後は、テレビドラマ1本書きつつ、構成・演出の番組1本作りつつ、フランスへも行く…という、忙しい2ヶ月を送ったのだが、その期間はでなかった。寒かったし、疲労度も高かったのに…。

ドラマの脚本は一週間くらいまえに終わり、一昨日がもうひとつの番組の試写だったのだ。それで、今日が局試写だから、まだ、終わったわけじゃなかったのに、「熱の花」が来た。それはつまり、自分の体が、もう、ウィルスに負けちゃっていいよね?と気をゆるめたことを意味する。

体って不思議だよなあ。意識しているわけじゃないのに、「ウィルスに負けていい瞬間」を勝手に判断している。本来なら、MA(音の仕上げ)が終わる、来週まで、緊張感を保たないといけないはずなのに…だから、そのときまで、ヘルペスになっちゃだめなのに、もう、来たのだ。ということは、体が勝手に判断しているわけ。もう、この番組はできたよね?…と。(いえ、まだ、できてないのに…)。

まあ、実際、今日は昼間、時間があったので、無事、行きつけの皮膚科に行けて、クスリももらえて、対処はできるのだから、今で良かったわけだ。数日前なら皮膚科に行く暇はなく、悪化させるだけだった。けど、今日ならOK..不思議でしょ。

不思議じゃない?

うちのカナという犬も、私が小説を書いている間中、頑張って生きて、書き上がって数日後に息を引き取ったよ。まるで、待っていたかのようだった。毎日、書いている様子を足下の座って見ていたし…。

犬とヘルペスを一緒にするのもなんだけど、なにか、不思議なものがある。この病にかかると、熱はないのに、体全体が熱っぽく、ぐったりして、そして、そこはかとなく、その部分が痛いので憂鬱である。ロシア語で言うと、タスカーな気分になるのだ。

…ということで、持病の話でした。なんで、こういう病が10年前から始まったのかわからない。どっかで移ったのかもしれないけど。いつか、「去る」こともあるのかな。

けど、この病気、いちいち皮膚科に行かないとクスリをもらえないのが不便。市販されたらいいのになー。今日、皮膚科の先生に、「市販されてないんですよね」と言ったら、「当たり前です」と憮然とされた。きっと、私が思うよりも強いクスリなのかもしれない。

自分にとっては、貴重なクスリである。