山田あかねの一喜一憂日記

テレビディレクターをやりながら、小説書いてます。映画も撮りました。脚本なども書いてます。 本、買って下さいね。

映画「サイド・エフェクト」

この映画には「副作用」があります……とでも言いたくなる作品でした。

スティーブン・ソダーバーグの最後の劇場公開作と騒がれている「サイド・エフェクト」を見た。

「ドラゴン・タトゥーの女」で、パンクな外見で性格ぶっこわれの主人公を演じた、ルーニー・マーラーが、同じ人物とは思えないくらい、全然ちがったキャラクターを演じている。

「サイド・エフェクト」では、エイミーという名の、清楚で守ってあげたくなるような少女みたいな女性役。エイミーは鬱病を煩っていて、自殺未遂などもしてしまい、精神科医のジョナサンと出会う。

このジョナサンをジュード・ロウが演じてますけど、あら?ってくらい、髪が後退してて、心配になるほど。額の面積がひろーくなってます。そこに奇妙な前髪というか、キューピー人形みたいなものがはりついていて、瞬間、「お笑い芸人」っぽい…。

すっかり「おじさん」キャラになってます。もちろん、ずっと見ていくとその魅力に引き込まれますが(←ジュード・ロウファン)、歳月というのはなんと残酷なものでありましょう。

キャサリン・セタ・ジョーンズもでてるんですけど、あのダイナマイトセクシー女優いずこ…というくらい枯れ始めてます。

て。

俳優の経年変化に注目する作品ではないんですが、まず、そこらへんがちょっと気になりました。

で、テーマは「鬱病とクスリ」ですね。サイド・エフェクトは副作用という意味でしょうが、抗うつ剤とその副作用を廻るお話なんです。

自殺未遂したエイミーを担当する精神科医、ジョナサンは、新薬を彼女に処方し、それがきっかけで、いろんな「副作用」が起きてきます。ついには、殺人事件まで起こります(ここらへんまでは予告編でもやっているので、ネタばれの範疇に入らないと思います)。

で、精神科医ジョナサンはその責任を問われていくのですが、いろいろ調べるうちに、とある疑惑にゆきつき、真相をあばく…という筋書きです。

いわゆるサスペンス仕立てになっています。ちゃんと最後にオチもあります。

しかし、そのようなサスペンスとして見ると、若干つまらない、というか、結構ありがちなお話です。これまでもこのような筋立てはあったように思います。その意味では新鮮ではない。

が。

そういうサスペンスとしての枠組みをはずし、これは「鬱病」に関する映画なんだと解釈すると、なかなか味わい深い作品に思えてきました。

アメリカは鬱病社会、といっても過言ではない?くらい、抗うつ剤がポピュラーです。

日本は自殺者年間3万人の国ですが、アメリカは自殺者は日本ほど多くないにしろ、カウンセリングはじめ、精神科医にかかっているひとも多いし、「うつ」は日常の病のようです。

何年か前の情報ですが、抗うつ剤は、胃薬や風邪薬と同じくらいの量、売れているんですねー。

鬱病は「心の風邪」というくらいだから、風邪クスリと同じくらい売れてもおかしくないのかもしれませんが、やっぱりちょっとびっくりしますね。

夏にロサンゼルスに行きましたが、最初に泊まったホテルの売店には、小さなクスリのコーナーがあって、そこで売られていたのは、風邪薬と胃腸薬とそして、抗うつ剤の3種類でした。3大日常病ってことでしょうか。

そんな状況だから、「うつ」はふつうの出来事です。この映画のなかでも、鬱病のエイミーに対して、上司や友人たちは協力的だし、優しく接してくれます。自分にも経験のあることだから…のようです。

そして、どの抗うつ剤を飲むか、というのも重要なテーマ。いろんな種類があり、合う合わないがあり、副作用もいろいろある。それを飲み比べながら、うつを闘っていくんですね。

いやー現代に生きるってたいへんなだーって思えてきます。

この映画を見ていると、自分もうつ気味だけど、それでいいんだ、ふつうだよねーと思えてきて、さらに、効くクスリがあれば試したいわって気分になってきます。

しかし!

そういう視点で見ているとラストにどんでん返しがあります。

これ、サスペンスとしては、弱いどんでん返しだと思うんです。斬新じゃないし、ちょっとしたライターなら誰でも想像つくような真相です。

でも。この映画の見所はそこにないような気がするんです。監督が見せたかったのも、サスペンス部分ではない。

なぜなら、もし、殺人事件の真相をあばくのがテーマの作品なら、もっと最初から、主人公、ジョナサン医師が真相に迫る…という作りになっていたはず。

でも、そうじゃない。エイミーの鬱病の症状をていねいに見せていくわけです。クスリを飲む前と飲んだ後も比較しながら、彼女の精神がクスリによってどう変わるか、もともとの鬱状態とはどんなものだったか、がかなり詳しく描かれます。

ここにこの作品のテーマがあると思うんですよね。

「うつ」とはなにか。精神疾患とはなにか。

みたいな問いかけです。

だから映画が終わって、犯人がわかったあとでも、すっきりきません。なんか、なにも解決していない気分になるからです。

暗澹たる気分。

全然、「うつ」から抜け出せてないんですよねー。

それが「うつ」という現代病の不思議につながり、「うつ」であることが日常の社会ってなんだろうという気分になるのでした。

そして、実際「うつ」っぽくなりますから。

これがこの映画の副作用(サイド・エフェクト)だったりして…。