山田あかねの一喜一憂日記

テレビディレクターをやりながら、小説書いてます。映画も撮りました。脚本なども書いてます。 本、買って下さいね。

イギリス 犬の旅 動物病院

クイーンの村、サンドリングハイムで、フィールドトライアルを見学したあと、ケンブリッジのコーディネーターさん宅に一泊し、翌日、ハードフォード州にある、動物病院へ行きました。



一見、のどかな家々に見えますが、ここが、イギリスでももっとも大きいといわれる動物病院『Davies Veterinary Special Limited 』です。

獣医さんは34名、ナース50名、90頭の動物が入院可能だそうです。

いわゆる街の動物病院ではなく、referal hospital…動物病院からの紹介で行く、より高度な治療を受けられる病院だそうです。

重い病気にかかった動物は、町の獣医さんから紹介され、ここへやってくるのです。



ここが待合室。小さなホテルのロビーのようなアットホームな雰囲気です。

院内を案内してもらいました。



院内に入ると、人間の病院のように、白い廊下が続きます。



ここは、MRI だっけ、CTだっけ。とにかく、そういう高度な診察のできる場所です。



レントゲンもあります。

最新の設備がそろっています。ほとんど人間と同じレベルの治療が受けられるといいます。



治療中のかわいいコ。



ここも治療中。



入院中の方も。



こちらからは、じっと見つめられました。せつないです。

こうして、院内を一周したあと、ひとりの医師と面談しました。

この旅の目的は、ミニのDNAの故郷を見に行く…というものですが、もうひとつの目的に、「果たして、ミニの受けた治療は最善だったのか」という問いの答えを探す…というのもありました。

いや、最善であったとは、正直思っていません。自分のなかでずっと、「抗がん剤治療を受けなければ、もうすこし生きて、あんなに苦しまずにすんだのではないか」という思いがありました。

答えを求めて、都内の動物病院3軒にいきましたが、明確な答えは得られませんでした。

というのも、ミニの最終的な治療をしてくれた日大動物病院は、国内でも有数の動物病院として知られており、そこで行われた治療を批判する獣医さんなどいないからでした。

けど。

本当にそうなんだろうか。果たして、ミニに使われたロムスチンという抗がん剤は、どれほど有効だという実績があったのだろうか。

この問いに答えてもらうべく、イギリスの動物病院を訪れたのでした。

ミニのカルテ、レントゲン写真なども持参し、面談の前には、コーディネーターさんと、ミニの病名などを英語で説明する方法などを相談もしました。

お話をしてくださった獣医のJさんに、まずは、イギリスでの動物病院の状況などについていろいろ伺いました。

その結果、日本とはちがうなーと思ったのは、ほとんどの犬が(犬の飼い主)が保険に加入していること。その数は8割ほどだそうです。

また、輸血システムのちがい。犬の献血をしているチャリティ団体が少なくとも2つはあり、そこから新鮮な血液を補給することができるそうです。凍結して、一年くらいは保存できるそう。だから、輸血する血がない…なんてことにはならないようです。

ミニは、日大病院に入院中、「これ以上、おたくの犬に輸血できる血はない」と宣言されて、追い出されましたから、イギリスの献血団体の話には胸を打たれました。

日本にもこんな団体があれば、ミニはもう少し生きられたかもしれない…。

その後、いよいよ、ミニの病状を話し、「もし、この病院だったら、助かったのでしょうか」という一番聞きたいことを聞きました。

答えはノーでした。

組織球肉腫と血管肉腫という死に至る病を持っていたのですから、当然かもしれません。

余命三ヶ月から半年という診断は同じでした。

が。

一番ちがったのは、こちらの獣医さんの言う、「生きる質」についてでした。

獣医として犬に対するとき、なにを一番大切にするかといえば、いたずらに寿命を延ばすのではなく、犬としての幸福、飼い主の思いを最優先させる…とのことでした。

そのため、ここへやってきた飼い主さんとは、最低1時間くらいは話し合うといいます。

その話し合いのなかで、最善とはなにかを一緒に考えるんだそうです。

犬によっても、飼い主によっても、その答えはちがうといいます。だから、とことん話し合う。

ちなみに、日大病院で抗がん剤を勧められたときの診療時間は10分ほどでした。…迷う暇もなく、考える時間もほとんどなかった…。

あっという間に抗がん剤使用が決められ、ぼーっとしているうちにミニは、投与のための部屋に連れて行かれました。

ミニが使用したロムスチンという抗がん剤についても、イギリスの獣医Jさんに話を聞きました。

彼は慎重に言葉を選びながらも、「ロムスチンは、組織球肉腫には効く可能性のある薬だが、血管肉腫に使用すると、内出血を起こし、貧血となる。使用する際は、気を使う」と答えました。

ミニは、内出血を起こし、ひどい貧血を繰り返してなくなりました。それは心臓に血管肉腫があったからなのですが、もちろん、それは亡くなった後、解剖してわかったことです。

なので、血管肉腫があったにもかかわらず、無理やり使った…とはいえませんが、それでも、少しでもそんな可能性があるなら、使わないか、様子を見るか、少なくとも、飼い主には、もっと詳細を説明してほしかったです。

「血管肉腫なら使わない…貧血を起こす」といわれた瞬間、ミニが何度も貧血で倒れ、真っ白なきれいな皮膚にただれたような内出血が広がっていた様子を思い出し、意識を失いそうになりました。

そうか、やっぱりそうだったのか。

もちろん、すべてはあとの祭りです。その時点では日大の獣医師にはそこまで想像できなかったのでしょう。あるいは、そういう知識がなかったのかもしれません。

私が、ショックを受けているのを見ると、Jさんは、「悲しい気持ちにさせてしまいましたね。ごめんなさい」と言って、しばらく黙り、私が回復するのを待ってくれました。

たぶん、この獣医さんは、自分の犬が助からないと知って悲しむ飼い主たちをたくさん見てきたんだなと思います。そして、そういうとき、とりあえず、一緒に回復する時間を過ごす…のではないでしょうか。

診療技術については、もしかすると日本の動物病院もかなり進歩しているのかもしれません。イギリスで訪れた病院なみに、 MRIやCTがあるところは、日本でも珍しくありません。かなり高度な医療を受けられるようになっていると思います。

でも。やっぱりちがう。

それは、犬の病気について、1時間話してくれる獣医さんがいないことです。それほど親身になって相談にのってくれるひとがいないことです。

(いえ、どこかにはいらっしゃるのかもしれません。しかし、自分は東京のどまんかにいて、かなり信頼されている動物病院をいろいろ訪ねての結果を言っています)。

この後、車でさらに3時間ほど移動し、サリー州のゴールデンレトリーバークラブのクリスマス会に出席することになっていました。

本当ならもっとうきうきしていいはず。

でも、「ロムスチンは内出血と貧血を起こす」という言葉が頭のなかで何度も繰り返され、ミニの笑顔と苦しんで死んでいった様子がよみがえり、なにも話せないほど落ち込みました。

でも、自分はこれを知るためにここに来たんだ、知ったからといって、今更ミニが戻ってくるわけではない。でも、知りたかった。自分の疑問をそのままにしておけなかった。

ようやくおさまっていたミニをなくした悲しみがぶり返し、ちっともいいことなかったんですが、たとえ、傷口を開くことになっても、知りたいことは知りたい…という自分の愚かな思いにつきあった一日でした。

しかし、夜、ゴールデンレトリーバーが17頭も集まったクリスマス会に出席して、気持ちは少しずつ、ほぐれていきました。

もちろん、そこには、ミニはいなかったんですけどね…。