山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

テレビドラマと映画のはざまで。

映画「キッズ・オールライト」の解説を書いたことがきっかけで、久しぶりに、テレビドラマ「Lの世界」のdvdを見た。

見逃していたシーズンがあったのでね。

「キッズ・オールライト」の監督は、「Lの世界」の監督もやっていたので、そのつながりで見たんだけど、映画とテレビドラマだと、演出や脚本など、どう違うのかを見たかったというのもある。

「Lの世界」はロサンゼルスに暮らす、レズビアンの女性たちの物語。20代後半から30代前半くらいで、みんな、おしゃれで、恋愛に夢中で、かっこいい家に住んで、映画のプロデューサー、大学の美術の教授、ライター、小説家、メイクアップアーティストなど、職業も派手。

ちょっと現実ばなれしている…とも言えるけど、レズビアンという、ややもすると、隠れて暮らす、マイナーな存在と思われがちなものを、明るく、華やかに描いたからこそ、ヒットしたのかもしれない…と思う。

「Lの世界」を見ていると、レズビアンであることのほうが、フツウで、今時、男と恋愛しているなんて、ダサイことのように思えるくらい、かっこよくて、美しくしくて、楽しそう。

でも、一方で、女と女の恋愛であっても、結局のところ、恋愛の持つ楽しさや華やかさ、別れの苦しさや痛みは、ヘテロの恋愛となんにも変わらないことを教えてくれて、単におしゃれドラマではなかった。

で、映画。

こちらも、レズビアンのカップルが主人公。なので、もしや、「Lの世界」の映画版…みたいなことになるのかなーと思っていたら、こっちは、ずっとリアルだった。

「Lの世界」のなかでも、シーズン5で、作家のジェニーが書いた、レズビアンに関する小説が映画化されることになる。そこでは、ドラマの主人公たちが、映画の登場人物になるという、スタイルになっている。

なので、実際の映画もそういう雰囲気になるのかしら…ちょっと「SEX AND THE CITY」の映画版みたいに…。

でも、そのような間違いは犯さなかったんだな。

「キッズ・オールライト」は「Lの世界」がレズの理想的な夢物語だとしたら、こっちは、とくかくリアルに押しているように思った。

まず、年齢設定がいいよね。「Lの世界」の主人公たちは、20代後半から30代くらいの、まだまだ、人生が夢と恋愛と希望に満ちている時代。遊んでいるうちに暮らしていける時代。

でもさー。人生は続くんだよね。

先日、上野千鶴子さんの「おひとりさまの老後」について、女性プロデューサーと話していたんだけど、その時、彼女が言った言葉が印象的だった。

「私も女一人暮らしで、この先、結婚するつもりはないの。若いころは良かったけど、この先、ひとりでどうなるのか心配…」と。

そうそう。30代くらいまではいいんだ、女は。

毎日、おもしろおかしく、パーティーみたいにわーわー遊んでいられる。遊びと仕事が入り交じった暮らしをしようと思えばできる。それに手を貸してくれる男はいっぱいいる。

ご飯もタダで食べられるし、服ももらえるし、いろんな遊びに行く機会もある。

けれども彼女たちは知っている。あと5年、あと10年たったら、そういう男たちが激減することを。手を差し伸べてくれる男が減ることを。

そして、自分自身もそんな暮らしに疲れることを。

でも、そうなったとき、どうする?夫も子供もいない。さみしいんじゃないか。後悔するんじゃないか…。

それに答える作品が、この世に少なすぎるよね。そういう女の行く末を描いたものがなさすぎる。

…という怒りはおいといて、「キッズ・オールライト」はさ、その未来を見せてくれているわけですね。

中年になったレズビアンのカップル。精子提供でもうけた子供が二人。普通の家族みたいな暮らし。

でも、本当に、そのまま、「普通」でいられるのか。だって、前提が、「普通」じゃなかったんだから。

その危機を丁寧に描いているわけだ。そして、その乗り越え方についても。

これはある意味、「Lの世界」のその後を描いているんだと思った。

毎日が、恋愛とパーティーの繰り返しみたいな20代を過ぎて、そのあとに、どんなツケが廻ってくるのか、来ないのか。

ここにきちんと焦点を当てている。それは、冷静にみれば、「普通の結婚」をしたとしても、直面するものかもしれないし。

細かい話をすれば、演出も細かい部分で違っていた。すべてがリアル。等身大になっていた。それもいいなーと思った。

とにかく、両方楽しめて、しかも、勉強になりました。

自分もやっぱり、やりたいなー。(あ、仕事のことです)