遅ればせながら、テレビドラマ「悪女について」を見た。(録画してあった)
有吉佐和子原作の昭和の末を舞台にしたお話である。
沢尻エリカ演じる、美貌の宝石商が、ある日突然の死を遂げ、その死の謎を、彼女の長い間の愛人だった男ー船越英一郎が解いていく…というストーリー。
いや、すっかりはまって見てしまった。
演出は尊敬する鶴橋康夫さんで、脚本は池端俊策さんという、日本のテレビドラマ界の重鎮というか大御所による作品。
丁寧に作られた王道のテレビドラマという感じ。昨今はこういう重量感のあるドラマってとんと見なくなった。演出が行き届いているんだけど、それが前に出てない感じて、思わず入りこんで見てしまう。
沢尻エリカ演じる、きみちゃんという女性。美貌を武器にさまざまな男に近寄り、手玉にとって、のし上がっていく…というある種の悪女の典型である。
いや、あるいは、この小説によって、ひとつの悪女像ができたのかもしれない。
男をだます悪い女なんだけど、あまりに美しく、魅力的であるために、男なら1度はだまされてみたい…と感じるような女。
先日、ブログにも書いた、「毒婦」のモデルになった、木嶋被告もある種の悪女ではある。いや、美貌以外はほとんど同じと言ってもいい。
言葉巧みに男に近づき、男に惚れさせ、お金を引き出す…という意味では同じ。
そういうワザができるのは、「美女に限る」と一方的に世間が思っていただけなのだ。
いえ、実は私も…。
それにしても、沢尻エリカはこの役柄にぴったりだった。類まれなる美貌と清純にもふしだらにも、天使にも悪魔にも見える、独特の雰囲気を持っている。
そして、それがいかにも「昭和の悪女」なのだ。
日本の高度成長に合わせて生まれて来たような悪女。
貧しい生い立ちと不幸な巡り合わせで、ゼロ、というかマイナスからスタートしたのに、持てる力とチャンスを全部使って、のし上がっていくのである。
それは日本の戦後からの成功物語のよう。男をだましてお金を取る…といっても、そこには彼女なりの戦略があり、努力があるように思える。濡れ手で泡のごとくにお金を手にしたのではないように見える。
成り上がり方がとても昭和っぽい。
ドラマも終わり方も昭和っぽかったんだけど、かなりの満足感というか、がっつり見た…という充足感があった。これぞ、テレビドラマ…という感じ。
洗練された作品を見ると気持ちがせいせいするね。
自分が好んで見るのは、実は、そういうものではなく、演出家の息づかいが聞こえて来るような、手触りが残るような、あまり完成されていないものが多いんだけど、やっぱり、良くできたものもいいなとあらためて思った。
最近、見るものって、ちょっとやりすぎ…というか、演出家、監督が前に出すぎのようなものが多くて、いわゆる、アートっぽい作品ですね、それらにちょっと食傷気味になっていたので。
というわけで、早朝、テレビドラマにどっぷりはまっておりました。
良質のフルコースを堪能しました。
鶴橋さん、やっぱり、すごい。