今日は、池袋芸術劇場で、劇団本谷有希子の「遭難、」を見て来ました。
2006年の初演で見て、おそれおののき、心底しびれたのでした。前作では松永玲子さんが、いや~な女、わがままな女、自分のことしか考えてない女を演じられて、そのふっきれた演技にも強く魅了されたのでした。
そして、再演。
今回は、映画「苦役列車」で時々売春したり、謝金しまっくたりのどーしよもない母親を、すごいリアルに演じていた黒沢あすかさんがやる予定だったのが、急遽、変わって。
しかも、演じたのは、菅原永二さんです。つまり、男子。
女性の役を男性がまんま演じるなんて、まるでハイバイ(岩井秀人氏の劇団)みたい!と期待度大半分、どうなるんだろう半分ででかけました。
舞台が始まって最初は、初演があまりに衝撃的だったので、細部を覚えていたし、前回の衝撃と比べてしまい、割とゆったりとみていたのですが、しかし。
物語がどんどん深まり、登場人物たちの濃さが深まっていくにしたがって、身を乗り出さんばかりに(実際、そうしてたかもしれない)、引き込まれました。
いやーしゅごい。(思わず、幼児言葉になるほど)。
面白いなー。脚本、よくできてるなー。
こんな風に激しく、人の暗部に迫っていきながらも、笑わせて、決して暗くならず、ストーリーは前に進み、破綻せず、カタルシスを持って終われるなんて、すばらしいです、ほんと。
なかなかないです、こんな芝居。いや、映画や小説に広げても同じくらいものってなかなかないぞ。
今回、あらたに感じたことは、ちょうど今、ニュースを賑わしている、尼崎の事件。
非道な60代の女性が、10名近いひとを殺めていた事件ですが、この犯人も罪悪観ゼロで、自分勝手な論法で生きてきたんじゃないかしら。
「遭難、」のさとみ先生(超自分勝手なひと)は人殺しはしていませんが、こんな風に自分のことしか考えず、反省せずって、案外、犯罪者に通じているんじゃないかって思いました。
以前見たときは、「自分のことしか考えてない、超わがまま女のお話」って思ってたけど、実際、そういう話なんだけど、それが犯罪者と妙に結びついてしまった。
婚殺詐欺の木嶋佳苗容疑者も、自分の論理で生きてて、罪悪感とかなかったんだろうなあーって初めて想像がついた。理解しようとしてもできないってことがわかった気がしました。
自分のまわり(仕事関係ではない)にも非常に自分勝手なひとがいまして、時々、心底びっくりする行動をとるんですけど、昔は理解しようと思っていましたが、もう、やめましたね。理解できない。というか、こちらが予想できない、ひどいことをしてくるので、無理だってことがわかったんです。
で、そういう人々の心の動きを見せてもらったように思いました。
もちろん、自分のなかにも、自分を優先する心もあるのですが、さすがに「さとみ先生」レベルまではいけません。
その開きなおりを、描ききった「遭難、」はとても刺激的でした。
しかし、なぜ、遭難、なんだろう。誰がどこで遭難しているのかしらねー。