山田あかねの一喜一憂日記

テレビディレクターをやりながら、小説書いてます。映画も撮りました。脚本なども書いてます。 本、買って下さいね。

ハリウッドの漁師

ネット上で有名な、「メキシコの漁師」の話を映画監督におきかえて、考えて見よう。

ある地方の小さな村に、暇な時間に、近所の友人たちと小さな映画を作っている人がいた。

普段は別の仕事をして、撮りたいときに撮りたいテーマで、細々と撮っている、自主映画の監督さんだ。

作品は村の公民館で、時々上映していた。

あるとき、大手映画会社のプロデューサーがたまたまその村を訪れ、偶然、彼の映画を見た。

その映画に感動した、大手映画会社のプロデューサーは言った。

「君はどんな風にして映画を撮っているのかね?」

「普段は普通に働き…といっても、そんなに忙しくないので、撮りたいテーマがあるとき、仲間と相談して脚本を作り、土日を利用したり、休みをとったりして、映画を撮ります。カメラは持っていますし、編集は自宅のファイナルカットでやってます。それで、近所の公民館で上映したり、ネットで配信したりしています」

「それは儲かっているのか?」

「いえいえ、全然。チケットは一応販売してますが、とても安いですから、それで儲かったりはしません。ネット配信も無料です。でも、そもそも制作費もほとんどゼロなので、特に損もしていません。でも、映画を撮るのが楽しいのでやっています」

「そうかい。じゃあ、君は今すぐ、その仕事をやめて、私と一緒に次の映画を作ろう。実は、300万部も売れたマンガの原作権をとってあるんだ。それを君が監督して映画化するんだ」

「でも、私はそのマンガを読んだこともないし、それを面白くできるかわかりません」

「大丈夫だよ、実は私もそのマンガは読んでいないし、面白いかどうかも知らない。が、とにかく、すごく売れたマンガだから、必ず映画になるし、有名な俳優も出てくれる。そして、うまく行けば大ヒットする」

「大ヒットするとどうなるんですか?」

「そしたら君は、こんな小さな村を出て、テレビ局や芸能プロやお金を出してくれる人がたくさんいる都会に住むんだ。君が見たこともないようなきれいな女優さんとも仕事できるし、大きなセットを組むこともできるぞ」

「次はどうなるんですか?」

「次も何百万部も売れた小説かマンガを映画化するんだよ。次々とこの原作を撮って下さいという依頼が来るだろう。テレビ局にも入ってもらって、宣伝費ももっとかけよう。君はその原作を映画化するんだ。」

「次はどうなるんですか?」

「そうなったら、君のところには、脚本の印税やら、演出料やら、君がこの村にいたら、一生縁のなかったほどのお金が入ってくる。そして君は大監督と呼ばれて、文化人としても尊敬される」

「次はどうなるんですか?」

「充分に稼ぐことができて、監督として名前を馳せることが出来たら、ここからは本当に君が撮りたいものが撮れるんだ。君の好きな場所で、君の好きなスタッフを集めて映画を撮ることができるよ。世間的には無名の俳優でも使えるし、大したストーリーじゃなくても、映画にすることができるよ」

「それなら、今でもそうですが…」

もしかして、こういうことになっていないのか、エンタメ業界…。

小さな村で自分たちの信じる映画を作っているひとが私は好きです。