山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

年の重ね方。

先日、大先輩である、女性監督に会いに、東京郊外の施設に行って来た。

海外映画祭での受賞歴もあり、80歳になるまで、現役でテレビ、映画のドキュメンタリーを作り続けている方である。

数年前に映画監督協会で知りあい、家が近所だったこともあり、時々、ご自宅に遊びに行ったりしてきた。

まず、魅力的なのが人柄。明るくて楽しくて、いつも前向き。

ずっと仕事しているけれど、気負いがなく、「興味がある、面白そう」という理由でどんどんロケに行ったり、作ったり。

ご自分でカメラをまわすこともあるし、ファイナルカットも使いこなし、次々とドキュメンタリーを作って行く。

震災のあとも、カメラマンを連れて、現地にすぐに入られた。作品にするかどうかではなく、見ておきたかったから…と言って。

そのパワー。

恋愛の話もオープンでいろんなことを教えてもらった。

(生涯、恋愛しつづけろ!と何度も言われました)

数年前に都内にもっていたマンションを売却され、1ldkの賃貸に引っ越された。

天涯孤独だから、ぼける前に身辺整理しておく、といい、本やdvdなどをかなり処分され、身軽になって、都心のマンションに暮らしていたのだ。

病気になったとき、看病に行ったけど、「大丈夫」のひとことで、全然頼ろうとしない。死ぬときは死ぬんだから…とさばさばと。

そして、今年になり、さらに身辺整理されて、施設に入られた。

健康に問題もなく、今でもしゃきしゃきとしてらっしゃるのに、自分で施設を見て回って、早々と住み処を決めてしまったのだ。

お訪ねすると、相変わらず明るく楽しく、暮らしていらっしゃる。

「人間、必要なものはそんなにない」といい、服も本もDVDも殆ど処分されて、服も数えるほどだし、本は図書館があるからいらない、と好きな作家の全集だけ残して全部処分したとのこと。

近所に火葬場もあるから、これで何があっても問題なし、と笑顔で仰る。

かっこいいのひとこと。

なんて潔いんだ。

自分で自分の身じまいを決めて、実行していく。

そして、今は、小説を書いている…と言うのだ!

映像はたくさん撮ってきたから、文章をちゃんと書いてみたい、と言って。

こう書くとすごく立派で近寄りがたいひとのように思えるかもしれないけど、一緒にいる間はずっと笑ったり、大騒ぎしたりでとても楽しい。

ああ、こういう風に年をとっていけばいいんだ…とあらためて思った。

かつては結婚し、子供を産み、子供や孫たちに看取られてこの世を離れるという生き方が一般的で、ある種理想的とされたかもしれないけど、もはや、そんな生き方ばかりではない。

(わたしはそれを理想とは全然思わないけれども)

「おひとりさま」の老後はどうなるのか、というのは大きなテーマだ。

けど、この大先輩を見ていると、ああ、そうか、こういう風にすればいいんだって教えてもらえる。

身をもって、教えてくださる。

同世代の女性監督と一緒に遊びに行き、ほとんど、一日を一緒に過ごした。

人気者なので、次々とわたしたちみたいな来訪者があるようだ。

いいなー。

迷った時、いつも指針になれる方と知り合えて自分は幸福だと思った。

犬が死んで悲しんでいたとき、「泣いてないで、映画撮れ」と言ってくれた方だ。

作り上げて、ちゃんと見せたい、とあらためて思った。