山田あかねの一喜一憂日記

心に引っかかるテーマは前後の見境なく取材に行きます。映画、テレビ、本つくってます。

未亡人は59歳。

昨日、「魂萌え!」読みました。
いやあ、面白かったです。面白い、という言葉はそぐわないですね。なんだろう、まずは、一気読みでした。果たして「一気読みした」というのが、小説に対する褒め言葉かどうか、迷うのですが、私なども自分の小説を「一気読みでした」と言われるとやはり嬉しい。

一気読みとは、とりあえず、途中でやめられなくなる、ということだから、褒め言葉なのではないか、と思います。なんでこんなことを、ぐちゃぐちゃ言っているかというと、さる文芸誌で小説を見てもらっていた頃は、「読み手を立ち止まらせなくてはいけない」といわれ、あなたの書くものはすらすら読めるのが欠点、と言われていたので、それが多少のトラウマになっているのですね。

しかし、昨今の、出版事情を見ると、「読み易さ」=褒め言葉みたいですから、素直に信じておこう。

おっと、「魂萌え!」のお話でした。

主人公は、59歳の未亡人です。まず、これだけで、偉いですね。出版界もテレビ界と同じで、「売れる」ってことが大テーマですから、主人公は女の場合、若いほうが好まれるわけです。説明するまでもないですが、世界はオヤジでできていますから、オヤジにとって、自分達と同じ男に関しては、何歳のひとが主人公であってもかまわないのですが、こと『女」に関しては、ヒステリックなほどに「若さ」にこだわる方が多いんですね。

ですので、59歳の女性なんて、ヒステリックオヤジ(=HOGとでも略)にとっては、『関係ね~」「見たくも聞きたくもね~」の世界なんですよね。さすが、桐野夏生さんという作家さんは、そういう「オヤジたちにとってのタブーの分野」に毎回、果敢に切り込み、しかも、ヒットさせていらっしゃるから、偉いなあと思います。

だって、「OUT」も、さえない女性4人の物語ではありませんか。当然ですが、若い女性でなくても、いろんな目に遭うし、いろんなことを考えて生きている。しかも読者はHOG的な読み方しかできないひとたちばかりではないんですね。

まあ、テレビでも、今クールでは「熟年離婚」が視聴率、ぶっちぎりましたけど、世の中の移り変わりに気づかないのもまた、HOGの特徴であります。

あ、つい、走りました。 「魂萌え!」のお話でした。そういう意味でまず、この小説は、これまで書かれなかったひとが主人公で、これまで書かれなかった筋書きが用意されている、ということですね。

物語として読んでも充分読みごたえありましたが、女性が年をとっていく、とはどういうことなのかってことをほんと、ていねいに教えてくれました。たぶん、桐野さんたちの世代って、いろんな部分で最初の世代なんですよね。女性でも責任ある仕事をもち、恋愛も経験した世代。そういうひとが、「おばあちゃん」という言葉では回収できない、ひととして、年を重ねて行く。

そのことを、ずっしり考えながら読みました。

この作家さんほど、現実をクールに見据えているひとってなかなかいないですよね。わかりやすい甘さがない。
ちょっと反省しました。「甘さ」をつい入れたくなるのが、自分の弱さですから。

自分ももっと頑張ろーと素直に思った次第です。